「部下のやる気を出させなければ」と考えている多くの上司も、出世・昇進というアメや強い指導というムチが通用しない昨今、どのようにコミュニケーションをとればいいのかわからない現状があります。上司自身も仕事に追われているので、部下とコミュニケーションをとることが後回しになり、部下の現状がわからなくなっています。そういうことも含め、企業でいま、どのようなことが起こっているのか見ていきましょう。

部下のやる気を生み出さない
1on1ミーティングとは?

 多くの企業が採用しているのが、上司と部下が短時間であってもコミュニケーションの時間を強制的にとる1対1のミーティング、1on1ミーティングです。

 1on1ミーティングとは、部下と上司が一対一で行なう定期的なミーティングのことです。上司・部下のコミュニケーションの希薄化が進むなかで、部下の成長促進を目的として、1週間に1回など高い頻度で行なうミーティングです。近年、多くの組織が取り入れて仕組み化しています。

 うまくやっている企業の話を聞くと、1on1を通じて上司と部下のコミュニケーションがよくなり、その副次的効果として職場の仲間同士のコミュニケーションもよくなったと言います。上司との1on1を通じて、コミュニケーションのよさを体感し、自然と仲間内にもそういった行動を積極的にとっていこうというモードがつくられたのだと思います。

 逆にうまくいっていない例としては、上司の話の引き出し方があまり上手ではないために、部下が自由に話せず、結局は業務の進捗確認ミーティングのようになってしまうパターンを耳にします。

 1on1はその趣旨からすると、部下の話を聴くことがメインとなるべきですが、日常は上司がよく話す側になる関係上、1on1の場でもそのパターンが崩れず、日ごろの会話と同じようになってしまうのです。

 これまでの上司は、部下に指示を発信する・理解させる・指導するなど、一方的にコミュニケーションをする側という意識を持っているので、部下の本音の意見を聞いても、どうすればいいのか、正直なところよくわからないのです。

 部下から要望や問題を伝えられたとしても、それを解決することが本当にいいとは限りませんし、解決に至ったとしても、上司にいえば何でもやってくれると思われると、部下自身が自発的に解決しようという行動が起きにくくなります。部下が自分自身で考えることの支援ができていないと、有効な1on1にはならないのです。