これまでとある意味、逆のスタンスを求められ、多くの管理職が反省・工夫・勉強を重ねながら葛藤しているのが現在です。この試行錯誤の姿は今後の組織の財産になっていくと思いますが、次々に起こる社員の離職はできるだけ早く止めたいものです。

社員同士の交流が減少すれば
誤解や疑心暗鬼、陰口が増殖する

 社員同士の交流の機会は明らかに減っています。リモートワークで雑談は少なくなり、飲み会も減っています。偶然出会った人との立ち話もかなり有効なのですが、それも減っていますし、意外に役立っていた喫煙所も減っています。「偶発的に会話が起きる場」が減っているのです。

 実は、これが組織運営に与える影響はとても大きいのではないかと思っています。

 情報にはデータ系情報と非データ系情報があります。データ系情報とは、文字や数字に落とせる情報です。一方の非データ系情報とは、雰囲気や口調など言葉には表わしにくい情報です。面と向かって話すことを通じて、その表情や話し方、雰囲気などから、その人の特徴がよりわかりやすくなるという点で、とても大事な情報です。

 人同士が話す機会(場)は、人と人とのつながりを生み出すところであり、アイデアや変化の起点となる場所でもあるのです。効率ばかりを追求したことで、こうした場を形成する時間やスペースが無駄とみなされるようになりました。そうして余白を減らしてしまったがために、新しいアイデア、面白いつながり、交流によって生み出される元気などが生まれにくくなっています。

 人は孤独に耐えられない部分もあるので、交流が減り、周りとつながっている感覚や職場での自分の居場所感を感じられなくなると、他人の悪口を言って仲間意識を高めたりします。

 また、情報が少ないと自分勝手に情報を受け取るため、本意が伝わらず、疑心暗鬼になったり誤解が増え、それがまた噂話で強調されると組織内に悪い情報が蔓延します。噂や悪い情報は、なぜか風通しが悪い会社でも伝播力があり、以前に伺った会社ではほぼ噂話で動いているようなところもありました。

 偶発的に出会う場が減り、お互いが話すところは堅い会議の場や、問題が起きた時の話し合いのみだったりするので、余計に胸襟を開いた会話がしにくくなり、話し合いというと嫌な気分でのぞむ無駄な時間に思えてきてしまうのです。