組織運営は、機械論的組織観と生命論的組織観の2つの側面を融合させながら展開していくもの。社員のモチベーションが上がらない場合、生命体的観点が不足していると考えられる。組織に生命体的要素を入れていこうとした時、「チーム」発想が有効だという。本稿は、高木穣(※高の字は、ハシゴダカ)『職場にやる気が湧いてくる対話の技法 令和の管理職の必須スキル』(同文舘出版)の一部を抜粋・編集したものです。
組織をひとつの生命体として
捉えて運営してみよう
いま、どういう考えにもとづいているのかに気づいていないと、新しい考えが示されても理解が薄いものになります。組織の2つの見方を提示します。
組織を機械のようなものと見立てる機械論的組織観と、生命体と見立てる生命体的組織観です。
現代の組織は大抵、機械論的組織観をもとにつくられています。機械とは、決められた信号を与える(インプットする)と、期待通りの動きをする(アウトプットする)ものです。テレビの電源ボタンを押すとテレビが映る、といったものです。
組織も上からの信号(方針や指示)が降ろされると、それにもとづいて下が動きます。下が思い通りに動かなかったら、機械に見立てると「故障」となるわけです。故障になった場合は、修理をするか、部品の取り換えになります。組織を機械に見立てると、働いている個人は「部品」になります。もし上位の指示通りの動きがなされないと「故障」とみなされ、故障部分とされた個人は他のメンバーに置き換えられるか、指導という名の修理が行なわれます。
組織図を頻繁に変える会社があります。その発想も、機械論的組織観にもとづいています。電子回路をつなぎ直すとうまくいく、というような。
以前、私も中小企業の社長さんとともに組織図を考えたことがあるのですが、パズルのような楽しさもあり、これでうまく行くような気がしたものです。
しかし、その組織図のなかにいる個人は、組織図を変えただけではすぐに意識の切り替えができません。組織図を頻繁に変える企業に限って、組織改編にともなって必要になる人間をサポートしないので、あまりよい結果が見られず、また組織図変更……となっていくのです。
さまざまな問題はあるにしろ、基本的にはこの機械論的組織観でうまくやってきましたし、この考えは今後もしばらくは重要だと思います。
一方の生命体的組織観は、組織を生命体と見立てるものです。人体が生命体の代表的なものですが、組織を生命体として観る場合、次の3つの要件があります。
ひとつは、ひとつひとつの細胞が自律的に動くこと。2つ目は細胞同士が双方向のコミュニケーションをとっていること。3つ目は全体としての方向性があること(人体の場合は生命維持)です。