「昭和の根性論」と「平成の効率主義」が令和の職場を地獄にするワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

組織が効率的に動いていけるのは、所属している人間がタテマエを準拠に働いているから。しかし、現在、過去からのタテマエと人々の本音が大きく乖離していることで、仕事のモチベーションが下がる人が増えているという。本稿は、高木穣(※高の字は、ハシゴダカ)『職場にやる気が湧いてくる対話の技法 令和の管理職の必須スキル』(同文舘出版)の一部を抜粋・編集したものです。

組織のタテマエと
社員の本音が合わない

 組織は通常、あるタテマエで動いています。タテマエというのは暗黙のルールです。所属している人がそれに準拠しているから、組織が効率的に動いていけるのです。

 だから悪いものとは言えませんが、時代の変化によって、過去からのタテマエと人々の本音との乖離が大きくなっているところが、いまのモチベーションダウンの要因となっているのです。

 組織を引っ張っている人々は、昭和時代や平成時代のタテマエ(あるべき論)でメンバーを鼓舞しています(詳しくは後ほど述べます)。しかし、それが逆にやる気に水をかけてしまい、ただ淡々と仕事をやっていこうという意識にさせているのです。つまり、社員の心にエンジンがかからないような燃料を与えているのです。

ベテランが持つ昭和のタテマエ
「タテ社会」と「気合と根性」

 いまの50歳以上くらいの人々は、昭和のタテマエで動いていました。たぶん1990年代前半くらいまでに社会に出た人がこれにあたるでしょう。高度成長期に適合する価値観、工業化社会を支える価値観に根差しているタテマエです。

 昭和のタテマエの大きなものが「タテ社会」と「気合と根性」です。上司の命令を絶対として部下はその通りに動く、動けば成果が上がる。単純に言うと、こういうやつです。

 私が最初に就職した会社は、OA機器の販売会社でした。コピーが本格的にオフィスに広がりはじめた時期で、新人はとにかく飛び込み営業をさせられます。1日のノルマが飛び込み100件、名刺30枚とかいうやつですね。

 コピーが普及しはじめた時期ですから、動けば見込み客が掘り起こされます。掘り起こされると、先輩がついていって刈り取るのです。コピーの販売を「地べたとり」などと言っていました。社長は「火つけ泥棒してもいいからコピーを売れ」と檄を飛ばしているとまことしやかに語られ、「営業本部長はベトナム戦争に参加した人物だから逆らうな」と恐怖心をあおるような噂まで流れていたものです。

 上司は怖いものという前提で、指示に逆らわずに気合と根性で動いていると、高く評価されました。

 この時代を過ごしてきた人は、動かない部下を見ると、「気合と根性で動け」という感情がふと出てきます。はっきりと認識していないにしても、なんとなく漏れ出ているものなので、部下はそれを察知し、嫌気を感じてしまうのです。