ガソリン仕様は軽快な走り味に好感
モダンで先進的な室内は操作に慣れが必要
48VマイルドHVのモーター出力は5kWにすぎず実際にその威力を体感するのは難しい。その一方で、数字上はパワフルとはいえないエンジンがもたらす力感は、日常シーンではまったく不足を感じない。時に耳に届くエンジンノイズが4気筒の音質で、正直そこに「見た目の印象と釣り合わない」という物足りなさを感じさせられる場面があったものの、不満と思えたのはただその1点だけだった。BEV仕様のi5に比べて車重が600kgほども軽い1760kgに抑えられていた点も、前述の“身の丈感”の演出につながることになっていたはずだ。
上質で先進的なインテリアの雰囲気は、i5、523iとも7シリーズに近い。メーターパネルとインフォテインメント用スクリーンを横並びでレイアウトした“カーブドディスプレイ”や、その下にレイアウトをされたアンビエントライトバー、クリスタルを多用した細部の作り込みや異形ステアリングホイール、高いセンターコンソールなど、数々の特徴的アイテムで構成されている。多くの物理スイッチを廃して生まれた異例にシンプルでクリーンなダッシュボード周辺のデザインも、やはり同様の印象だ。
それゆえ思いどおりの操作をしようとした際に一筋縄ではいかない場面に多々遭遇することになった。この点も7シリーズと同様である。もはや主要操作は音声入力で……という意見もありそうだが、こと各スイッチのコントロール性については、多くのBMWファンが愛でて来た“操る歓び”とは相容れない方向に進んでいるようにも思えてしまう。
外観上は7シリーズよりも遥かにコンサバティブに思える5シリーズだが、乗り込めばやはりなかなかエキセントリック。どのようにユーザーに受け入れられるのか注目したい。
(CAR and DRIVER編集部 報告/河村康彦 写真/横田康志朗+山上博也)