「最近の若い人はメンタルが弱すぎる?」と考える人へ、精神科医からのガチの警告をしましょう。
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)

「最近の若い人はメンタルが弱すぎる?」と考える人へ、精神科医からのガチの警告Photo: Adobe Stock

「休職」は増えている?

「最近の若い社員はふわふわした理由で辞めていく。メンタルが弱すぎる」と耳にすることがあります。

 たしかに、転職が以前より一般的になり、休職や早期退職する人が増えているのは事実です

 新しく入社した社員が辞めることで、中間管理職や人事担当者がメンタルを病んでしまい、精神科を受診するケースが増えています
 そんな方々に、ぜひ知っていただきたいことをお伝えします。

「問題がある」から退職する?

 転職活動の活発化やメディアの影響で、退職がカジュアルに捉えられるようになりました。
 退職代行サービスも充実し、転職が当たり前の時代です。
 社会的な背景や政府の後押しもあり、退職しようとする人を止められないことが多く、それを個人の問題として捉えることが問題視されています。

「退職するのは教育が悪い」
「面接で見抜けなかったのか」

 などの心無い言葉を受けると、人事部や中間管理職の方がメンタルを病んでしまうことがあります。
 人間は本能的に怖いことや嫌なことから逃げる生き物です。
 退職が決まっていると、止めるのは難しいことがあります

 原因は個人ではなく、社会の変化や会社の組織の問題である可能性もありますので、あまり思いつめないようにしてください。

メンタルを「病まないようにする」ために

 転職や退職がカジュアルになっている影響もありますが、人間関係の問題でメンタルを病み、退職する人は依然として多いです。

「最近の若い人は大したことない理由で退職する」という話を耳にすることもありますが、それは問題が「うまく抽出できていない」ためかもしれません

 特に新入社員は、自分の問題や悩みをうまく言語化できないことが多いです。
 その結果、自分を追い詰め、社内で孤立し、最終的には会社に来られなくなることもあります

 これを解消するためには、本人も気づいていない悩みや問題に共に取り組む姿勢が必要です。
 問題点を「誰が」ではなく「どこに」あるのかを整理し、悩みを「言語化」するためのヒアリングの時間が必要です。

 職場のメンタルヘルスについての研究でも、定期的なカウンセリングがストレス軽減に効果的であるとされています

 会議ではなく、少しの話し合いやヒアリングを通じて、問題点や悩みを抽出し、働く人の不安やストレスを軽減できる場合もあります。
 疲れたときは、少しだけ話す時間を作ってみてください

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)

参考文献:American Psychological Association, “The Importance of Mental Health in the Workplace”

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。