「販売体制が整えられない」ことを理由に、セブン-イレブンが「100円生ビール」(ちょい生)の提供を断念してから早6年。店内でのオペレーションを練り直す時間は十分にあったはずだが、他の大手チェーンを含め、今もなおコンビニ店頭で生ビールは売られていない。販売すれば大ヒットが見込めると思われるが、何がネックになっているのか。生ビールを売れない状況下で、最近になって一部コンビニが始めた「注ぎたての酒を売る」秘策とは――。(流通ジャーナリスト 森山真二)
販売中止から6年…
セブン「100円生ビール」復活はある?
セブン-イレブン(以下セブン)が、一部店舗で始める予定だった「100円生ビール」のテスト販売を急きょ中止したのは2018年7月。セブンは当時、その理由として「注目が集まりすぎて販売体制が整えられない」といった趣旨のコメントをしていたが、あれから約6年がたつ今も販売は再開されないままだ。
ビール需要の最盛期である夏を前にして、「100円生ビール」が再び売られればありがたいところだが、「まさかの復活」を果たす可能性はあるのだろうか――。
結論に触れる前に、かつてセブンが「100円生ビール」を売り出そうとした理由を改めて考察してみたい。おそらく、それは極めてシンプルなものだろう。生ビール本体での収益を得られるほか、カウンター回りのファストフード、チルドのサラダや焼き物、そして「おつまみ」などの「ついで買い」が見込めたからだと考えられる。
顧客による買い上げ点数の増加は、コンビニの成長にとって不可欠だ。ローソン元社長の新浪剛史氏(現サントリーホールディングス社長)は、ローソン社長在任時に「もう一品がなかなか増えない」「もう一品何かを買ってもらう努力をしたい」と語っていたことがある。
その観点からも、缶ビールよりも単価が安く、ビールサーバーによって味わいを高めた生ビールを提供すれば、顧客による「ついで買い」の食指が動いた可能性は高い。
セブンはかつて、レジ横で「揚げたてドーナツ」を展開して失敗したことがあるが、それとこれとはわけが違う。生ビールを売り出せば、確実に買い上げ点数アップの起爆剤になることはセブン側も分かっていただろう。
そうした勝算があったにもかかわらず、セブンが土壇場で生ビールの販売を取りやめたのはなぜか。次ページ以降では、筆者が考える「二つの要因」をはじめ、セブンによる「100円生ビール」再開の可能性や、コンビニで「注ぎたての酒を売る」ビジネスの最適解について解説する。