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2023年シーズン、阪神タイガースは18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一に輝いた。原動力となったひとつが岡田彰布監督の、選手の闘争心に火をつける「モチベーション力」だ。あらゆる組織における一流のリーダーになるための極意がここに見える。本稿は、児玉光雄『岡田彰布 眠れる力を引き出す言葉 「初心貫徹」で生きる80のヒント』(清談社Publico)の一部を抜粋・編集したものです。

一流のリーダーは動かない
好機を我慢強く待つのみ

「強いチームは、簡単に勝てないことを知っている。だから最善の策を駆使して、1点でも多く取る。しかし負けるチームほど、簡単に勝てると思っている。だから試合以外のチームづくりの部分でも、ちょっと補強したら勝てるなどと安易に考える。1つ勝つのにどれほど労力を費やさないといけないかが、わかっていない。その結果、毎年負けるのだ」(岡田彰布監督)

 監督の手腕は僅差のゲームの勝敗に如実に表れる。2023年シーズンの阪神の1点差のゲームは全部で43試合。その内訳は26勝17敗。勝率6割、11試合の勝ち越しである。

 この世の中は接戦の連続である。接戦を勝利に導くためにはリーダーである監督の采配の手腕が問われるのだ。接戦になっても、あるいは劣勢になっても、岡田はあまり動かない。そこで流れがこちらに来るのを我慢強く待つ。

 太陽が雲によってさえぎられたとき、キャリアが浅いリーダーはすぐに動く。つまり、太陽の光を求めて歩き出してしまうのだ。それによって心の迷いが起こり、たいてい自滅してしまう。

 一方、岡田のような一流のリーダーは動かない。ただひたすら雲が流れ去るのをじっと待つ。そうすれば、やがて再び雲が切れて太陽が現れることを知っているのだ。

岡田監督はなぜ「四番大山」を
動かさなかったのか?

四番とは、みんなが認めるバッター。これが四番の条件よ。『なんでアイツが?』『アイツの四番は無理がある』なんて声が出るような選手に四番は務まらないし、任せられない。四番・大山。これをシーズンで貫く。そういう意味でオレは相当頑固かもしれない」(岡田監督)

 阪神が日本一を実現した要因として大山悠輔の活躍を忘れてはならない。2023年シーズンの大山の活躍は特筆に値する。打率・288、19本塁打、78打点。四球獲得数(99)はリーグ最多を数え、最高出塁率(.403)のタイトルを獲得。

 全試合四番スタメン出場は阪神の選手では2009年の金本知憲以来、14年ぶり史上5人目、生え抜きでは1985年の掛布雅之以来、38年ぶりである。

 2023年の阪神ほど打順を固定した球団は、ほかにあまり見当たらない。それは143試合で135通りのスタメン構成を組んだオリックスの中嶋聡監督とは好対照である。

 リーダーなら「お前にすべて任せた!」という言葉を口ぐせにして最大限の権限を彼らに委譲しよう。そうすることにより、メンバーのモチベーションは自発的に高まり、彼らはすごいパフォーマンスを発揮してくれるようになる。