信念を徹底して貫くリーダーに
メンバーは自発的についていく

 2023年シーズンに阪神が日本一になった大きな要因は、岡田が自分の信念を貫き通したことにあったと私は考えている。彼はすべて自分の信念で動く。言い換えれば、周囲の人間の考えに惑わされないのだ。

 もちろん一人ひとりのリーダーの信念は異なるものであってもいい。しかし、いったん自分の信念を開示したら、それを変えてはいけない。なぜなら、信念をコロコロ変える自信のないリーダーにメンバーはついていかないからだ。

 リーダーなら自分の信念を貫くだけでなく、その信念をその理由とともにわかりやすくメンバーに開示しなければならない。このことについて、2023年シーズン前に、岡田はこう語っている。

「1、2番は近本(光司)、中野(拓夢)でいこうと思うんですよ。ふたりとも盗塁王を獲ってますし、走るのは武器ですから。相手に走れるというのを見せつけておきますよ。とにかく恐怖心を植えつけておかないと」

 自分の信念を貫けば、たとえそれが実らなかったとしても後悔することはない。それだけでなく、スポーツ界のみならず、ビジネス界においても信念を徹底して貫くリーダーにメンバーは自発的についていくのだ。

負けた理由を冷静に分析し
成長するための糧にする

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」という言葉で脚光を浴びたのは野村克也である。

 じつは、これは肥前国平戸藩主・松浦静山の言葉である。松浦は剣術の達人であり、この言葉の真意を要約すると、「本来の武道の道を尊重し、教えられた技術を守って戦えば、たとえ気力が充実していなくても勝つことができる。だから不思議と考えずにはいられない。一方、本来の道から外れ、技術を誤れば、負けるのは疑いのないことだから、不思議の負けはない」となる。

 岡田はこう語っている。

「勝ち負けには必ず理由がある。いや、なければならない。なぜ勝ったのか説明できなければいけないし、負けた時も敗因が必ずあるものだ。例えば、今日は自分たちはいい試合をしたけれども、たまたま相手が上回った。投手起用の順番を間違えた。すべての結果に必ず理由はある」

 岡田には、「どんなゲームも不思議という言葉で逃げてはいけない」という思いがある。勝ちゲームは私たちに自信を与えてくれる。一方、負けゲームは私たちに欠けているものを教えてくれる。すべてのゲームを糧にして貪欲に成長する手がかりを探り出す。リーダーなら、このことを忘れてはならない。