ロシアは、通常の軍事力だけではなく、多様な手段を組み合わせ、短期間のうちに両地域を奪取してしまったのです。まず同国は、侵攻の何年も前から、多数の政治工作要員を、両地域に送り込みました。そして、ロシアへの接近を訴える人物を選挙で勝たせたり、インターネットなどを通じてロシアへの親近感を高めたり、といった工作を続けたのです。

 その上で、標識をつけない身元不明の兵員を一気に送り込みました。これは後に、ロシアの特殊部隊や、民間軍事会社の兵士などだったこと、が明らかになっています。

 さらに、その兵員たちが、官庁等の重要拠点を瞬時に占領すると、大規模な正規軍を国境付近に集めて圧力を掛け、ロシアに有利なフェイクニュースを大量に流して、人々を混乱させた上で、住民投票を実施。一方的に、独立を宣言させたのです。これによって、クリミアと、ドンバスの約半分が、2カ月ほどの短期間で、ロシアの影響下に入ることになりました。

 これがハイブリッド戦です。ハイブリッド戦は、ロシアだけが用いる戦争形態ではありません。また、ロシアはこれまでも、シリアなどでの戦いにおいて、ハイブリッド戦を実行してきました。しかし、欧州でこれが仕掛けられたことに、国際社会は驚いたのです。

第二次大戦末期にソ連が不法占拠した
「北方領土」は日本に返ってくるのか

 日本政府は、北方領土(国後島、択捉島、色丹島、歯舞群島)を「我が国固有の領土」だとして、ソ連・ロシアと長年にわたって、実務者級(官僚)、閣僚級(外務大臣)、首脳級(日本の首相とソ連・ロシアの最高指導者)での交渉を続けてきました。

 しかし、近年のロシア軍の動きを見ると、北方領土を返す兆候は見られません。