しかしこれは、あまりに直截的過ぎる表現。また、国連の憲法と言える「国連憲章」(第2条第4項)のように、先制攻撃の禁止を謳った条約があり、国連加盟国にはこれを守る義務があります(実際には、「ウクライナ戦争」のように、破られることもある)。

「国連憲章」同項の条文は、次の通りです。

「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも、慎まなければならない」。

 そのため現在は、クラウゼヴィッツの前述の言葉を、公に使う政治家・外交関係者はまず、いません。とは言え、外交と戦争が、相反するものとも言えないこと、は押さえておきましょう。もちろん、戦争が起きないための外交・安全保障上の努力は、何より大切ですが。

ウクライナを侵略中のロシアと
大兵力を誇る中国・北朝鮮に接する日本

 ではここから、日本を取り巻く「3つの危険国」の脅威を見ていきましょう。ロシア、北朝鮮、中国です。下図の「東アジアにおける関係各国・地域の兵力」から、ここではロシアについて紹介します。2022年2月24日。同国は、隣国ウクライナに侵攻しました。

図表:東アジアにおける関係各国・地域の兵力中国・北朝鮮の兵力は、かなりの規模となっている。これが、東アジアにおける安全保障環境を、危険な状況に陥れている (出典)防衛省『令和5年版 防衛白書――日本の防衛』 拡大画像表示

 それに対し、ウクライナ軍は激しく抵抗。数日間、あるいは数週間で首都キーウを陥落させられるとした、プーチン大統領の予測とは異なり、長期にわたる戦いが続いています。

 ご存じの人も多いと思いますが、ロシアがウクライナを攻撃して領土を奪うのは、これが初めてではありません。

 14年2~4月、ウクライナ南部のクリミア半島と、南東部ドンバス(ドネツク州とルハンシク州の通称)に侵攻し、クリミア半島と、ドンバスの半分ほどを支配下に置きました。このときに用いられ、世界から注目されたのが、「ハイブリッド戦」。