日本政府は、ロシアによって軍事侵攻を受けているウクライナからミサイルの供与を求められたが応じなかった。これについて自民党の河野太郎デジタル相(元防衛相)は「今回も(防衛装備の実績を作る)チャンスを逃した」と悔しさを隠さず、自衛隊の装備が実戦で使えることを証明して輸出を増やす重要性を強調した。特集『軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦』(全25回)の#12では、政界のキーマンである河野氏に、衰退している防衛産業の再建策などを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
研究開発のため日本学術会議は改変も
防衛費倍増には財源の議論が必要だ
――日本を取り巻く安全保障環境をどう見ていますか。
真っ先に考えなければいけないのが(沖縄県の)尖閣諸島です。(同島周辺を航行する船を)中国は「海警(中国海警局、日本の海上保安庁に相当する一方、「海上武装部隊」という準軍事組織として位置付けられている)」の船だとしていますが、海警は中国の海軍の傘下にある組織です。
海保が対応していますが、年々、中国の船は大きくなるし、ほぼ居座っている状況。海保にかなりの負担が掛かっています。
もう一つは中国の空軍機への対応です。(航空自衛隊による)スクランブル発進が1日平均2回ぐらいある。これも相当な負担です。
そして、中国は台湾に対しても同じように圧力をかけている。台湾有事は「if」というより、「when」という感じになりつつあります。
台湾有事の際、中国は「日本が(自ら)巻き込まれなければ、中国は日本と戦火を交える必要はない」というメッセージを発信し、情報戦を仕掛けてくるでしょう。呼応して(日本国内から)「巻き込まれることに反対だ」という声が上がります。
もし(日本政府が)「巻き込まれないようにしよう」などと判断すれば、その時点で日米同盟は崩壊します。日米同盟なしに中国と裸で向き合うことになれば対処のしようがなくなる。
だから、日本は「台湾有事の際は米艦、米軍防護をしっかりやる」という決意、そして万が一、在日米軍基地や自衛隊が攻撃されれば本格的に対処する(軍事行動を実行する)という決意を日頃から発信しておかなければいけません。「日本は台湾有事に巻き込まれないように(行動を自制)する」などという幻想を中国に抱かせないようにするのが非常に重要です。
国内の備えも大事です。台湾有事に南西諸島が巻き込まれた場合、国民保護のためにどう対応するか、早急に決めなければいけません。
――7月の参議院議員選挙の自民党の公約に防衛費を「国内総生産(GDP)比1%」から「同2%以上」を念頭に増やすことが盛り込まれていました。しかし、河野さんは予算倍増には慎重な姿勢を示しています。来年度の予算編成に向けてどんな議論が必要ですか。