学校で、教務主任や教頭が学級担任を兼務する事態が起こっている。教員不足のためだ。教育の現場がますます疲弊している。
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「綱渡りの連続でした。教頭まで学級担任をしましたが、手が足りない」
大分県で小学校教務主任を務める内藤さん(40代・仮名)は、一昨年度、凄まじい「教員不足」を実感した。全校児童約450人の学校で、年度はじめから欠員が2人生じていたが、最終的に4人の教員が欠けた。産休と精神疾患による病休が重なった結果で、臨時講師(臨時的任用教員)を確保できなかったのだ。
子ども同士でトラブル、保護者対応は後手に
かぜなど体調不良で学校を休む教員は出るし、ほぼ毎日、新人研修などで出張がある。そのため、稼働できる教員の数はさらに減る。教務主任や、教頭といった管理職までが学級担任を兼務する事態になった。
学校において、教務主任や管理職の本来の業務は、学校文書の作成、保護者対応、生徒指導のサポート、体調不良などで担任が不在のクラスの自習の監督などだ。が、担任自体を受け持つことになれば、本来の仕事が滞ってしまう。
「自習の監督ができないので、子どもたち同士のトラブルが起こったり、保護者対応が後手に回ったりするなど、ミスが生じやすくなりました」
足りないのは臨時講師
「教員不足」がいよいよ深刻化している。
文部科学省によると、「教員不足」とは、「臨時講師」などを確保できず、実際に学校に配置される教員数が、各都道府県・指定都市の教育委員会が学校に配置することとしている教員数(配当数)を満たさず、欠員が生じている状態をいう。
つまり、教員不足とは、正規教員が足りないのではなく、臨時講師不足を指す。
臨時講師とは1年任期の非正規教員のことで、産休や病休に入った教員の代わりとして任用され、授業や学級担任などを務める。だが、長年、臨時講師に依存した学校運営が当たり前のように行われてきた。大分県の公立小・中学校などにおける教員定数の標準に占める臨時講師の割合は8.3%(2020年)だ。その体制がいま、限界にきている。