温水洗浄便座市場のリーディングカンパニーであるTOTOが、原因不明の火災事故への対応で揺れている。
事件が発生したのは9月8日。福岡県鞍手町立病院内の男子職員用トイレで火災が発生し、温水洗浄便座「ウォシュレット」が全焼した。幸い、けが人はなく、天井はススで黒くなったものの延焼はしなかった。当初、「内部発火ではないか」との一部報道もあったが、火事の原因については製品内部からの発火か、放火なのかは不明。現在は消防・警察が調査中だ。
同社はこれに素早く対応。事件発生からわずか17日で自社による解析結果を発表した。「製品内部からの発火ではない」「外部からの要因による製品の焼損」と推定されると発表した。こうした事故には通常2人で対応しているが、今回は約20人を投入して早急に解析したという。安全性には絶対の自信を持っているようだ。
急いだのは、じつは2007年4月に温水洗浄便座18万台に発煙・発火の可能性があるとして、無料点検・修理を発表したばかりだったからだ。今回、全焼した製品はそのなかに含まれていなかったことから、早急に調査を開始した。4月に発表した製品は原因がなかなか究明できず、最初の事故から約3年公表しなかったことで批判を浴びていたから、なおさらだ。
温水洗浄便座はいまや多くの家庭にもある製品であり、調査を急ぐのは当然だ。ただ過去には約3年もかかった調査が、17日で終了するとはいささか性急過ぎるとも受け取られかねない。
また、木瀬照雄・TOTO社長は4月末の2006年度決算発表の席上で、無料点検・修理に至ったことについて陳謝しながらも、「われわれは発火とは思っていない」と発言して居合わせた記者をびっくりさせた。
それまでの事故は大きな炎が出ることはなく、発火とは思っていないとの意図だが、9月の温水洗浄便座全焼が内部発火によるものだとすると、これが覆されることになる。それだけに、今回の「安全宣言」は、トップの威信を賭けたと見るのが自然だろう。今は消防・警察の調査結果を待つのみである。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也)
※週刊ダイヤモンド2007年10月20日号掲載分