ノートに書き込むビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

発言を一言一句メモしたノートを後から見返しても、イマイチ内容が頭に入ってこないし、どこが重要なのか見当もつかない……。本当の意味で知識を身に付けるには、思考を回転させながら話を聞くことが重要だった。本稿は、篠ヶ谷圭太『使える!予習と復習の勉強法――自主学習の心理学』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

単なるメモでは意味がない
効果的な学習方法とは何か

 効果的な学習方略は、授業を受ける時でも大切です。

 学習方略には反復方略、精緻化方略、体制化方略といった情報処理に関するもの(認知的方略)や、モニタリング、プランニング、コントロールのように、自分で自分の学習を管理するもの(メタ認知的方略)があります。

 これらの学習方略は、説明を聞いたり動画を視聴しながら学ぶ時にも使われていることが心理学の研究では報告されています。さらには、どのような方略を使うと理解が深まるのかも研究されています。

 たとえば、授業で先生の説明を聞いている時、みなさんはノートにメモをとっているでしょうか。板書に書かれていることや、スライドで表示されていることを単に写すだけでは十分とは言えません。なぜなら、それでは自分の頭が使われておらず、浅い処理しかできていないからです。

 説明された内容をしっかりと理解して身につけていくためには、自分の知識と結びつけたり、授業の内容を整理したりすること、つまり、精緻化方略や体制化方略などのように、情報を深く処理していくことが大切になります。

 板書やスライドの内容以外に、授業で話された内容を自分の言葉でメモすることは精緻化方略にあたります。耳から入ってきた情報を自分の言葉で言い換えて書き残すことは、頭の中にある知識と結びつけないとできないからです。

見聞きした情報のうち
どれをメモに残すか

 心理学では、ノートのメモに注目した研究が盛んに行われてきました。そうした研究では、ノートにメモをとることが高い学習成績につながることが報告されています。その一例を紹介しましょう。

 180名の大学生に講義を聞いてもらい、その内容を後で思い出すように指示しました。その結果、学生が思い出すことができた内容はノートに書き残した情報と関連していることがわかりました。ノートにメモをした情報であれば半分ほどを思い出すことができたのに対して、メモをとらなかった情報は15%しか思い出せなかったことが報告されたのです。

 ノートにメモを取ることは、自分の知識を使いながら情報を編集し直して理解を深めていく精緻化方略です。ただし、それ以外にも、ノートへのメモは、「外部記憶」という機能も持っています。