岸田外交の唯一の成果は
G7広島サミット

 欧州は、ギリシャ正教との勢力圏争いでロシアを攻めた中世のドイツ騎士団の時代から現在に至るまで、十字軍的な夢から覚めることができず、現実的な将来ビジョンもなく、ウクライナ人を扇動してロシア人と戦わせている。

 また、カナダやメキシコといった米国と歴史的に特殊な関係にある隣国が、中国やロシアと自由意思で民主的に軍事同盟締結や経済統合をしようとしたとき、米国がそれを許すとは思えない。

 パレスチナについても、ハマスの襲撃事件は許されないテロ行為だが、イスラエルのネタニヤフ政権が国際法無視の暴虐を続けているし、ガザの惨状はジェノサイドだと批判されるのも当然だ。国際刑事裁判所の主任検察官がネタニヤフ首相に逮捕状を請求したことも当然である。

 欧米のイスラエルへの甘さは、中世以来のユダヤ人差別とホロコーストへの後ろめたさに基づいているが、償いを自分たちではなくパレスチナ人に払わそうとするのは間違いだ。特にドイツがイスラエルの暴虐を批判することをためらっているのは、人道に対する罪を繰り返すことになるだろう。

 これらの問題で、日本が欧米と対立するのは、日米同盟やNATOとの協力関係にある以上難しい。だが、日本は先進国グループの中でいちばん後ろを付いていけばいいし、対立する両者の仲介の労も果たすべきだ。安倍首相ならそうしていただろう。

 ウクライナを支援することで、ロシアに対し、安直な軍事行動に対する代価を払わすことは、台湾や韓国の安全性を増すことにつながると言う人もいるが、あり得ない。ウクライナのように米国の思惑で戦わされるなど嫌だと台湾や韓国の人も思うだろうし、ウクライナ戦争によってアジア経済は大打撃を受けているから、4月の韓国総選挙では与党が惨敗して、中国や北朝鮮を喜ばせている。ウクライナの平和こそがアジアの利益である。

 また、北朝鮮によるロシアへの武器提供と実戦における使用、それに伴うロシアから北朝鮮への技術供与は、北朝鮮製の武器の性能の大幅向上に結び付きそうで、東アジアにとって相当に深刻な問題だ。

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する岸田首相の応援は正しいが、夫人を巡るスキャンダルで大統領の支持率は低迷しており、助けても徒労に終わりそうだ。岸田首相はグローバルサウス重視というが、ウクライナとパレスチナについて、極端な対米従属外交を続けるようでは効果は上がらない。

 岸田外交の目玉のはずの、核廃絶は、広島でG7(先進7カ国)サミットを開催したのが唯一の成果だ。