衆院補選全敗でも意欲満々の岸田首相「6月政局」に向けた“起死回生の策”とは?写真提供:筆者

二階俊博元幹事長の緊急入院で
不在になった「政局の演出家」

「二階さんが東京・御茶ノ水の病院に緊急入院した。付き添ったのは側近の武田良太元総務相らしい」

 こんな情報が永田町からもたらされたのは、5月9日のことだ。二階氏は85歳。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、政治責任を理由に次期衆院選への不出馬を表明した直後の4月、心臓疾患で入院し、そのリハビリの過程で脳梗塞も併発したという。

 二階氏の地元、新和歌山2区では、三男で公設秘書の伸康氏が次期衆院選では後継候補となる予定だ。

 救急車で搬送されたわけではないという点で見れば、容体は深刻ではないとも言えるが、二階氏の身にもしものことがあれば、現行の区割りで実施される和歌山3区には激震が走る。

 また、それ以上に、2020年9月、菅義偉政権誕生の流れを作った二階氏が、辣腕をふるえない事態となれば、政局の演出家も不在になるばかりか、二階氏と近い小池百合子東京都知事の国政くら替えと自民党総裁選挙への挑戦の可能性もゼロになる。

 読者の方の多くは、「二階さん?もうお年だし潮時なのでは?」と感じているだろうが、旧二階派に所属していた議員の多くは、「一度話せば好きになる」と口を揃える。

 ある政治評論家の娘が結婚した際は、新郎がJTBの社員だと知ると、すぐにJTBの社長に電話をかけ、主賓として式場に招く気配りを見せ、他派閥にいた議員が「二階派に入りたい」と言えば必ず受け入れる男気のある政治家である。

 その二階氏を慕う議員は多く、通常であれば、岸田文雄首相が衆議院の解散に踏み切ろうと踏み切るまいと影響力を駆使したに相違ない。

 ただ、これで「政局の演出家」が1人不在になった。6月に解散があるのか、それとも解散がないまま9月の自民党総裁選を迎えるのか、そして総裁選に岸田首相が出るのかどうかは、岸田首相本人と、政策集団として健在の麻生派を率いる麻生太郎副総裁の胸三寸になったと言っていい。