「忙しすぎて本を読む時間がない」「1冊読み切るのに時間がかかる」「読んでも読んでも身につかない」――そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。本を読めばいいことはわかっているのに、自主的に読めない人もいるでしょう。
何の本をどう読み、どう活かしていくか――働くうえで必携のビジネススキルを良書から抜き出したのが『ひと目でわかる! 見るだけ読書』。本書は、コスパやタイパを重視する現代的な読書スタイルを重視する人にとっても、魅力的な読み解き&活用法です。たった「紙1枚」を見るだけで本の最も大事なポイントが圧倒的なわかりやすさで理解でき、用意したワーク1枚を埋めるだけで即スキル化できる1冊。それも1万冊の読書体験と1万人を教えてきた社会人教育の経験から、絶対に読んでほしい24冊+αを紹介。ただ、エッセンスをまとめただけでなく、読後には、紹介した本が有機的につながっていく仕掛けがあなたのビジネススキルを飛躍的に向上させます。
『論語』で海外移住を実現した話
本書で古典中の古典である『論語』を取り上げました。私自身、『論語』にある「四十にして不惑」を体現するようなカタチで、昨年末、41歳で海外移住(マレーシア)を実現したからです。
それほど自身のキャリアや人生に影響を及ぼしている『論語』ですが、私は先ほどの「不惑」という言葉を、典型的な解釈では理解していません。
通常、「不惑」は「惑わず=迷うな=貫け」と解釈されます。「40代にもなってフラフラするな、いい加減これと決めた道を貫け」といった意味になります。
ですが、この解釈だと「息苦しい」「生き辛い」というのが、私の率直な感想でした。
なぜなら、前後の30代「而立(じりつ)」、50代「知命(ちめい)」も、「而立=自立を確立して、貫け」「天命を知り、貫け」となり、結局30歳から30年間にわたって、1つの道に縛られることにな
これだけ選択肢が多く自由にも生きられる現代において、この解釈はあまりにも窮屈だと思うのですがいかがでしょうか。
「不惑=不枠」という解釈
20代の頃、こうした『論語』への違和感を解消してくれる名著と出合う機会に恵まれました。『身体感覚で『論語』を読みなおす。』(安田登著、新潮社)で、安田さんによれば「不惑」とは「不枠=枠にとらわれるな」であると。
この解釈のおかげで、私はキャリアに関する確たる方向性・軸を持つことができました。本書ではこの学びを「紙1枚」にまとめて紹介していますが、この場にも「1枚」まとめを掲載しておきます。
「復習は楽しい」わけがない
『生きるための論語』(安冨歩著、筑摩書房)も、タイトル通り人生に活かせるような論語解釈を多数学び取れる本です。
たとえば、有名な冒頭文「子曰く、学んで時に之を習う、また悦ばしからずや」について、通常は「学んで時に復習するのは喜びだ」などと解釈されています。
ですが、素直に考えて、復習は大変であり面倒であり、喜びになどなりえない。それでも時間をかけて何度も復習する理由は、学びを身につけたいから。あるいは、復習することでより深い認識に至れるからです。
確かにその瞬間にたどり着いたときは「喜ばしい」ということで、安冨さんはこの冒頭文を「何かを学び、それがある時、自分自身のものになる、よろこばしいことではないか」と解釈されています。
このように読み解けば、ファスト思考になりがちな現代人ほど『論語』を読むべきだという話にもなってきますし、実際、安田さんや安冨さんのような論語解釈が、今の時代にこそ必要なのではないでしょうか。
以上、今回は名著中の名著である『論語』を紹介しながら、とはいえ、古典にはさまざまな解釈が存在すること。だからこそ、自身の仕事や人生にどう活かせるかといった観点から読み解いていくことの重要性について書いてみました。今後に向けた良い契機となれば幸いです。
(本原稿は書籍『ひと目でわかる! 見るだけ読書』著者の書き下ろしです)