武田薬品工業本社Photo:PIXTA

日本の製薬最大手、武田薬品工業は5月上旬の2024年3月期決算発表に合わせ、25年3月期の事業構造再編費用に1400億円を投じると発表した。この約10年間、同社に“破壊と創造”をもたらしてきたクリストフ・ウェバー社長CEO(最高経営責任者)のトップ交代が近いとうわさされる中、最後の大仕事となるかもしれない。漏れ伝わってくる武田薬品のリストラの中身を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

社員向けタウンホールで
既に事業構造再編を説明

「タケダでリストラに関する『タウンホール』開催案内が社員に発信されたらしいぞ」。製薬業界は5月上旬、業界王者の動きにざわついた。

 日本の製薬最大手、武田薬品工業は5月9日の2024年3月期決算発表に合わせ、25年3月期に事業構造再編費用として1400億円を投じる計画だと発表した。

 報道機関向けの会見資料に記されたその内容は「機動的で最適化された事業運営モデルへの変革、調達コスト削減、デジタル・自動化・AI(人工知能)による全社的な生産性と効率性の向上」などと抽象的だ。

 さて冒頭のタウンホールとは、タウンホールミーティング(経営陣と社員の対話集会)の略。武田薬品社員によると、本稿執筆までに早くも前出の事業構造再編に関するタウンホールが開かれた。

 世界のメガファーマ(巨大製薬会社)の一つ、英グラクソ・スミスクライン(GSK)元幹部のクリストフ・ウェバー氏(57歳)は15年に社長CEO(最高経営責任者)に就任。そのころから、武田薬品はグローバル化や競争力向上の名の下、大変革期に突入した。

 その変革は枚挙にいとまはない。大きなものでは、旧湘南研究所のリストラ(16年度)、アイルランドの製薬大手だったシャイアーを約6兆円で買収(18年度)、国内の医薬情報担当者(MR)のリストラ(20年度)、完全子会社だった大衆薬大手の武田コンシューマーヘルスケア(現アリナミン製薬)の売却(20年度)、完全子会社だった日本製薬のリストラ(21年度)――などだ。

 もはや大変革に慣れたかに見える社員たちだが、今回の事業構造再編予告には緊張が走ったようだ。その理由は歴年の費用と比べて大きい(次ページに経年グラフ)こともしかり、そのタイミングにもよる。ウェバー社長CEOはかねて25年ごろのトップ交代をにおわせており、この再編が最後の大仕事となるかもしれないのだ。そうとなれば総決算として大ナタを振るうかもしれず、社員は戦々恐々としている。

 気になるリストラ内容が徐々に社外へ漏れ出している。どの部門を対象に人員削減が実施される可能性があるのか。また、リストラ対象となっている研究所とは。次ページで、その内容を明らかにしていく。