リストラが繰り返される武田薬品工業の元社員たちがOB・OG組織を立ち上げた。OB・OG組織といっても現役で働く世代が中心。中には現役のタケダ社員もいる。単なる親睦会ではなく、「ヤメタケダ人脈網」を仕事やキャリアで活用しようというのだ。特集『1億総リストラ』(全14回)の#9は、ヤメタケダ人脈網の実用度を探る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
元社員が新コミュニティー
現役社員たちも集う
武田薬品工業は2020年8月、大衆薬子会社の武田コンシューマーヘルスケアを米投資ファンドに売却すると発表した。同社は21年3月31日からアリナミン製薬として再出発する。
「タケダの優秀な皆さんがどんどんバラバラになってしまいます。このままでいいんですか?」
武田薬品の元国内製品広報担当で現在コンサルタントの新野雅子さん(17年退社、55歳)は、売却情報を耳にした大手広告代理店の元社員に問われた。この人物は武田コンシューマーヘルスケアの看板製品である「アリナミンシリーズ」の広告を過去に担当し、武田薬品の代名詞でもあるアリナミンを手放したことにショックを受けていた。
メガファーマ(巨大製薬会社)出身のクリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者)は、世界で競える会社にするために、武田薬品の大変革を遂行した。リストラや事業スピンアウトで、研究者やMR(医薬情報担当者)など多くの社員が定年を待たずに去った。新野さんもその一人。会社の方向性と思い描く自身のキャリアとのずれを感じて退社した。
「大転換の経営戦略。それはそれでいい。だけど社員がバラバラになるのはもったいない」と新野さんは思った。新天地で働く者たちがつながれば、ビジネスに生きる人脈網を形成できるのではないか――。
そこで自らが発起人となり、武田薬品OB・OGのビジネスコミュニティー「Active-T(アクティブ・ティ)」の立ち上げに動いた。単なる親睦会ではないと聞いて現役世代が続々と集まり、中には現役武田薬品社員もいる。