「一瞬でお客様の信頼を得るために持ち歩いている“アイテム”があります」
そう語るのは、アメリカン・エキスプレスの元トップ営業である福島靖さん。もともとコミュ障で、学生時代は友達ゼロ、おまけに高卒。そんな福島さんは31歳でアメックスに法人営業として入社するも、当初は成績最下位だった。しかし営業になる前、6年勤めたリッツ・カールトンで磨いた「お客様の記憶に残る技術」を営業でも発揮したことで成績は急上昇。テレアポ、セールストーク、クロージング…営業の常識をすべて捨てて、わずか1年で紹介数・顧客満足度全国1位、表彰もされるトップ営業となった。
その経験とノウハウをまとめたのが、初の著書『記憶に残る人になる-トップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』だ。ガツガツしなくても「結果を出せる人」になる方法が満載で、営業にかぎらず、人と向き合うすべての仕事に役立つと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、お客様の記憶に一瞬で残るために携帯している「アイテム」を紹介する。(構成/石井一穂)
ある日の商談で気になった「小さな水たまり」
お客様との商談でいつも利用しているカフェ・チェーン店がありました。
オフィス街にあるカフェで、適度に席の間隔が離れており、ビジネスパーソンが多くて商談をしていても浮いたりしないため重宝していました。
席に案内されると、まずおしぼりと、氷の入った水が出てきます。
「今日はお忙しいところ、ありがとうございます」
挨拶を終え、しばらくすると、テーブルの上にできた小さな「水たまり」が目に入りました。
そのお店は、来店時に出てくる水にコースターが付いていなかったんです。
このお店にかぎらず、似た光景を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
「コースターがあればいいのに……」
そう思った僕が店員さんに相談するも、「用意がない」との返答。
そこで「だったら自分で持てばいい!」とひらめき、ネットで紙コースターを購入し、かばんに忍ばせるようにしました。
1枚5円で手に入れた、大きな効果
とはいえ、これ見よがしに「ドヤ!」とは出しません。
お客様が到着する前にあらかじめコースターを敷いておいたり、気づかれないようにサッと敷いたりする程度です。
それでも半数くらいのお客様は「あれ? このお店、コースター付いてましたっけ?」と気づいてくれます。
そこで「僕が敷いちゃいました」と答え、続けてこうお伝えします。
「お客様の大事な書類やパソコン、契約書を濡らさないためです」
するとお客様は、「そんなことまで考えてくれているんですね」と感心してくださるんです。
たった1枚5円のコースターでお客様に驚きを残せるので、カフェでの商談が多い人にはぜひおすすめしたい気遣いです。
今でも僕は、かばんに20枚ほど忍ばせています。
アイテムを持ち歩くことで、自然と意識が気遣いへと向かいます。
「気遣いアイテム」は、臨機応変な対応が苦手な人にはおすすめです。
(本稿は、『記憶に残る人になるートップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』から一部抜粋した内容です。)
「福島靖事務所」代表。経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。高校時代は友人が一人もおらず、「俳優になる」ことを口実に18歳で逃げ出すように上京。居酒屋店員やバーテンダーなどフリーター生活を経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。同社が大切にするホスピタリティを体現し、6年間で約6000人のお客様に名前を尋ねられるほどの「記憶に残る接客術」を身につける。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。当初は営業成績最下位だったが、リッツ・カールトン時代に大切にしていた「記憶に残る」という在り方を実践したことで、1年で紹介数、顧客満足度、ともに全国1位に。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。38歳で株式会社OpenSky(プライベート・ジェット機の販売・運航業)に入社。40歳で独立し、個人事務所を設立。本書が初の著書となる。