ダメな管理職は「やたらと褒めて人を伸ばそうとする」。じゃあ一流の管理職は?
そう語るのは、これまで4000社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『リーダーの仮面』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のマネジメントスキルを解説する。(構成/種岡 健)

ダメな管理職は「やたらと褒めて人を伸ばそうとする」。じゃあ一流の管理職は?Photo: Adobe Stock

「褒めること」の弊害

 あなたは、やたらと褒めることをしすぎていないでしょうか。

 本当にできる管理職やリーダーは、部下を褒めることは少ないです。
 それは、期限内に任務を遂行するのは「あたりまえ」のことだからです

 その「あたりまえ」の基準をできるだけ高く保つことが、リーダーの役目だと考えています。

 人間の意識構造上、褒められたときに、「その少し下のところ」が「あたりまえ」の基準になります
 70点を取った人を「すごいね」と褒めると「60点くらい」。80点を取った人を褒めると「70点くらい」が、「あたりまえ」になる感覚です。

 そうであれば、「あたりまえ」は100点に設定しておく必要があります。
 目標に対して、150%以上の成果を出せば、さすがに褒めることはありますが、それは100点満点を「あたりまえ」にしておくためです

 とはいえ、さすがにリーダー1年目の立場で、まったく褒めないことはなかなか難しいかもしれません。
 それでも、「あたりまえ」の基準を設定し、それを大きく超えたときだけ褒めるようにすることは、誰にでもできるはずです。
 仮面をかぶり、簡単に「よくやった」「すごい」と言わないようにしましょう。

「私は褒められて伸びるタイプなので、褒めてくれないとやる気が出ないんです」

 そんなことを言う若手社員がいます。
 しかし、学生ではなく社会に出た会社員である以上、褒められて伸びるタイプを認めてはいけません
 仕事を通して、お客さまから笑顔をもらったり、評価に応じたボーナスを受け取って家族から褒められたりすることで、個人的に承認欲求を満たしてもらうのは自由です。
 しかし、それはリーダーが満たしてあげることではないのです。

 みんなでマンモスを狩って、みんなでマンモスを食べる。
 そういう時代では、ハッキリと「成果」が先にありました。
 よって、「みんなでマンモス獲ってきたのか、すごいぞ!」と、目の前の肉に、評価が直結するのも当然です

 しかし、貨幣が誕生し、会社組織が出来上がり、給料制度が整ったことで、「自分が出した成果」「目に見える評価」が間接的なものになりました。
 すると、「成果」と「評価」の順番が入れ替わってしまいました。
 成果を出しても出していなくても、ほぼ同じ給料がもらえるので、「先に評価されることで、成果を出すためのモチベーションが湧く」という、おかしな理論が成立したのです。

 それは、「みんな、マンモスを狩りに行くのか。すごいな」と、目の前に肉がない状態を褒めているようなものです。
 会社組織では、このような矛盾が当然のように起こってしまいます。
 だからこそ、リーダーが、全員を「成果」へと向かわせなくてはいけません
 プロセスを褒めず、大きな結果を待つ必要があるのです。

(本稿は、『リーダーの仮面』より一部を抜粋・編集したものです)

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年4月現在、約4000社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』のシリーズ(いずれもダイヤモンド社)がある。