忙しすぎて本を読む時間がない」「1冊読み切るのに時間がかかる」「読んでも読んでも身につかない」――そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。本を読めばいいことはわかっているのに、自主的に読めない人もいるでしょう。
何の本をどう読み、どう活かしていくか――働くうえで必携のビジネススキルを良書から抜き出したのが『ひと目でわかる! 見るだけ読書』。本書は、コスパやタイパを重視する現代的な読書スタイルを重視する人にとっても、魅力的な読み解き&活用法です。たった「紙1枚」を見るだけで本の最も大事なポイントが圧倒的なわかりやすさで理解でき、用意したワーク1枚を埋めるだけで即スキル化できる1冊。それも1万冊の読書体験と1万人を教えてきた社会人教育の経験から、絶対に読んでほしい24冊+αを紹介。ただ、エッセンスをまとめただけでなく、読後には、紹介した本が有機的につながっていく仕掛けがあなたのビジネススキルを飛躍的に向上させます。
「経営」も「読書」も「一勝九敗」でいい
『見るだけ読書』のなかで、ユニクロ・柳井正さんの『一勝九敗』(新潮社)という本を紹介しています。以下のような「紙1枚」にまとめて、学びをガイドしました。
タイトル通り、この本は経営において全戦全勝などあり得ないこと、したがって、一発勝負ではなく中長期的に繰り返しトライすることの重要性を説いた本です。
『見るだけ読書』では、経営者に限らず個人としてもこの本を活かせるように、「成長」という観点から学びをまとめガイドしています。
今回の記事では、「一勝九敗」的な世界観を、さらに「読書観」にも応用してみたいと思います。
「読破の呪縛」を解き放つ
先日、「読書」をテーマにした学習機会に、講師として登壇しました。より正確には、「読破できない悩みを解消する」というのがメインテーマだったので、私は受講者さんに「そもそも読破とは何か?」といった問いについて考えてもらいました。
素朴に考えれば、その答えは「本を最初から最後まで全部読むこと」になると思います。一方で、私はそのようには定義していないという話をしました。
読破とは、「読書を通じて、課題を打破すること」。あるいは、「読書を通じて、閉塞した状況を突破すること」。つまり、「最初から最後まで」といった「走破」的な意味ではなく、「打破」や「突破」の「破」として「読破」を捉えてみたいのです。
実際、本の中にはそもそも最初から最後まで読むことを前提にしていないものも多々あります。さまざまな講演や論考を寄せ集めた本や、多様な人物のインタビュー集などを思い浮かべてもらえば、1冊の本を通じて何か一貫したメッセージがあるわけではないこと。したがって、必ずしも最初から最後まで読まなくてもいいといったことは、すぐに了解できるのではないでしょうか。
にもかかわらず、読書についてのお悩みを受け付けると、本当に多くのビジネスパーソンから「最初から最後まで読めなくて……」といった趣旨の質問をいただきます。
「全戦全勝」ではなく「一勝九敗」的な読書観へ
そこで、先ほどの「読破」の定義です。
自身が抱えている課題を「打破」したり、願望実現に向けて壁を「突破」していくために本を読む。こう捉えれば、すべての文章を読み、理解する必要はなくなります。この読書観であれば、200ページの本から、たとえ1か所でも実際に仕事や人生に役立てることができれば、それでもう「読破した」と捉えられるからです。
「一勝九敗」的な世界観と接続すれば、1冊の本から、1回の読書で1か所でも学びを得られたら(=一勝)、たとえ他にわからない場所や読み切れない場所がたくさんあったとしても(=九敗)構わない。中長期的に時間をかけて、また折に触れて何度も読み直せばいい。そんな読書観になります。
実際、古典や名著と評される本には難解なものも多いため、全戦全勝的な、最初から最後まですべて理解しようとするような読書観では、まず挫折してしまいます。
だからこそ、このような「走破」的な本との付き合い方だけでなく、自身の問題解決=課題「打破」的な読書観も、ときには採用してみてほしいのです。
以上、あなたがもし、「最初から最後まで読みきってすべて理解することが読書」という呪縛のせいで読書に苦手意識を抱いているのであれば、今回の方法を採用してみてください。
(本原稿は書籍『ひと目でわかる! 見るだけ読書』著者の書き下ろしです)