遊撃は捕手のサインや、構えたコース、打者のスイングである程度、打球を予測できます。ところが三塁は角度的に打球の予測が難しいのです。

 坂本にとっては2024年が本格コンバートの1年目みたいなものです。概念を覆すような三塁手になれるかもしれません。三塁手というと「強い」「直線的」というイメージがあるのですが、今までにない柔らかい三塁手になりそうです。

 ハンドリングも華麗ですし、背の高さもプラスになります。いい三塁手になれると思います。2023年にしても開幕から絶不調でスタメンを外されたことがありながら、終わってみれば116試合で打率2割8分8厘、22本塁打、60打点の成績は見事です。まだまだ欠かせない存在です。

 阿部監督はある程度休みを入れながら、120試合ぐらいで計算したほうがいいでしょう。35歳となり、全試合に出ることを目標とするより、ベストパフォーマンスを発揮できる方法を考えるべきだと思うのです。

書影『虎と巨人』(中央公論新社)『虎と巨人』(中央公論新社)
掛布雅之 著

 1988年12月生まれの35歳ですが、蓄積したものがあるので、プロ野球選手は単純に年齢では計れないものがあるのです。私も33歳で引退しましたが、小さな体はすでにボロボロでした。坂本も運動量の多いショートであれだけ長いこと野球をやっていたら、満身創痍でもおかしくありません。プロ野球の歴代のショートで、2000試合以上出場したのは坂本だけ。それまでの出場記録は屈強な体を持つ鳥谷敬で、坂本の2000試合出場を「考えられないこと」と驚いていました。

 プロ野球の歴史の中でもベストナインに選ばれるショートだと思います。坂本の場合は打撃でも歴史に残る選手なのですから。すでに2000安打をクリアし歴代4位の445二塁打(2023年終了時点)は1位の立浪和義の487という数字が見えています。守備だけなら吉田義男さんの方が上かもしれませんが、打力を含めると坂本はプロ野球歴代ナンバー1ショートと言えるのではないでしょうか。