2008年の北京オリンピックを契機に不動産ブームに沸いた中国。絶対的な実需によってこのブームが長期にわたって続くと見込んだデベロッパーは、ここぞとばかりに経営の多角化を図った。ところが、習近平政権が正式に誕生した2013年3月以降の中国
中国では、日本のバブル崩壊よりも
深刻な影響が予想される
2023年9月、中国のSNSである情報が流れて大騒ぎになった。中国国家統計局副局長だった賀鏗が中国国内で開かれたフォーラムで、中国の不動産市場は供給過剰の問題が深刻で、今売りに出されている住宅は14億人が入居しても余るぐらいだ、と述べたとのことだった。
中国の不動産市場は明らかに供給過剰になっているが、賀の言い方は明らかに事実に反している。部屋の広さは別として、単純計算すれば、1戸あたりに住んでいる中国の標準家族は3~4人である。今現在、3億ないし4億戸のマンションまたはアパートが売りに出されているとは思えない。このような荒唐無稽な数字をもとに、中国不動産バブルが崩壊したと指摘するのは、根拠不足といわざるを得ない。
不動産バブルが崩壊したかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれている。中国の不動産バブルがすでに崩壊したと指摘する専門家は、不動産デベロッパーのデフォルトを理由に中国経済が日本化(Japanification)する、すなわち、日本と同じように失われた20年か30年を喫するのではないかとみているようだ。
それに対して、中国の不動産バブルは崩壊していないとみている専門家は、中国の景気減速は一時的なもので、デベロッパーがデフォルトを起こしているが、不動産バブルの崩壊を意味するものではないと指摘している。では、どちらの見方のほうがより真実に近いのか。
私の考えを大胆にいえば、中国が民主主義の市場経済だという前提に立てば、すなわち、政府が直接市場に介入できないということを前提として考えれば、中国は30余年前の日本と同じように不動産バブルが崩壊し、デフレに突入している段階だと断言できる。
中国の不動産バブルはすでに崩壊している。事業を多角化させていたデベロッパーはもちろんのこと、本業に絞って不動産開発に専念していた「健全」なデベロッパーも、経営難に直面するようになった。