ただし、中国の不動産バブルの崩壊の仕方は、30余年前の日本が経験したバブル崩壊とは異なるものになる。日本のバブル崩壊は金融システムに飛び火し、都市銀行を含む大手金融機関までが倒産したが、それ以上はバブル崩壊の影響が広がらなかった。とくに重要なのは、日本は30年を失ったといわれているが、技術は失わなかったことだ。

 それに対して、中国のバブル崩壊は国有銀行に飛び火するだけでなく、地方財政にも飛び火し、深刻な社会不安を引き起こす恐れがある。それはサプライチェーンの再編と重なり、外国企業が工場をほかの途上国に一斉に移転すれば、中国は技術も失う可能性がある。

共産党幹部を接待するための
「喜び組」

 中国の不動産価格がバブルと化した流れを振り返ろう。都市開発のために、デベロッパーは地方政府から地上げされた土地を落札して、それを担保に銀行から融資を受ける。そのプロセスで地方政府の幹部および銀行の幹部に多額の賄賂を贈るというのは、中国では広く行われている周知の事実である。そこに不動産建設の材料費や人件費の上昇も上乗せされていく。経済が順調に成長している段階では不動産開発も順調に進み、デベロッパーの売り上げも順調に拡大していた。

 このようななか、多くのデベロッパーは経営の多角化を図っていった。不動産業は景気にもっとも連動する産業である。景気のよい局面において不動産業は景気の牽引役となる。景気が減速すれば、不動産業は一気にしぼんでしまう。きわめてわかりやすい構図だが、中国のデベロッパーは自国の不動産需要において「剛需」が長く続くとみていた。だから強気の開発計画を展開するだけではなく、まったく無関係の副業にも幅広く手を出した。経営の多角化を成功させるには本業と副業の補完関係が必要不可欠だが、多くのデベロッパーはそうしなかった。

 2021年にデフォルトに陥った恒大集団を例にとってみると、本業の不動産開発のほかに、電気自動車の開発、プロサッカーチームの買収、テーマパークの建設と運営、ミネラルウォーターの製造販売などを手広く手掛けてきた。2023年に創業者の許家印が警察に拘束されたあと、彼に纏わるさまざまな悪事が明るみに出た。

 その1つが、土地の入札のために共産党幹部を接待する専用「会所」(プライベートクラブ)を作り、歌舞団を設立したというものだ。歌舞団をわかりやすくいえば、北朝鮮指導者の「喜び組」のような組織である。