『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』という一冊の本が刊行される。手の付けられない乱暴な子に育った著者が、思春期の頃、おじいちゃんに教わった「人生の教訓」について書いたものである。そして実は、タイトルにある「おじいちゃん」とは、かの有名な「ガンジー」のことなのだ。12歳だった孫の人生を変えたガンジーの教えとは? 世界中の人々が「自分」と向き合うきっかけとなった本書の邦訳を記念して、その一部を特別に公開する。

「言うことを聞かない子ども」にどう接するか? インドの賢者ガンジーの的確すぎるアドバイスphoto:Adobe Stock

子どもに学んでほしいことを、あなた自身が行いなさい

 バプジ(「祖父」の意味)の考えでは、子どもは教科書よりも、むしろ教える大人の人格や行動から学ぶことのほうが多い。だから、「私の言う通りにしなさい。でも私の行動を真似してはいけません」という教育方針には真っ向から反対していた。

 子どもに何かをさせたいのであれば、まず自分がそれと同じことをしなければならない。バプジは親や教師たちに、「子どもに学んでほしいことを、あなた自身が実際に行いなさい」とアドバイスしていた。

 私自身、バプジの行動や考え方に直に触れることができたのが、やはりいちばんの勉強だった。バプジは優しく、辛抱強い先生だった。みんなのお父さんやお祖父さんのような存在で、誰もがバプジをお手本にして学んでいた。

 バプジは、自分がお手本になって人々を導いた。現代の親たちも、バプジのやり方に学ぶところは大いにあるだろう。

 たとえば、多くの親は、子どものゲームやテレビ、スマホの時間を制限したいと思っている。しかし、親自身の行動を見てみると、家族と過ごす時間にスマホに夢中になっていたりする。

 そんな親を見た子どもが学ぶのは、スマホなどの電子機器は他の何よりも大切なのだということだ。少なくとも、「子どもであるあなたよりもスマホのほうが大切だ」というメッセージは、間違いなく伝わってしまう。

 自分では菓子パンや砂糖たっぷりのシリアルを食べながら、子どもには野菜や果物を食べなさいという親を見ると、私はやれやれとため息をつきたくなる。子どもは親の言うことを聞くのではない。親の行動を見て学んでいるのだ。

(本記事は、『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』(アルン・ガンジー著、桜田直美訳)の一部を抜粋・編集したものです)