6月スタート、岸田政権「4万円定額減税」~経済効果はわずか0.19%、仕組みも複雑写真はイメージです Photo:PIXTA

 6月から実施される定額減税。減税額は1人4万円とされているが、その仕組みは複雑だ。効果を実感し、政権の思惑通りに景気は上向くのか、疑う声もある。AERA 2024年6月10日号より。

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 岸田政権が命運をかけた「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の一環として、所得税と個人住民税の定額減税が6月から実施される。納税者本人、生計を一にする配偶者、扶養親族に対し、各々1人当たり年間で所得税3万円、住民税1万円が減額されるというものだ。

 たとえば、夫と妻、3人の子ども(扶養親族)という家族構成なら、合計で年間20万円の税負担軽減となる。ただし、所得制限が設けられており、2024年の合計所得額が1805万円(給与収入のみの場合は2千万円)以下であることが前提に。この所得制限を超えてしまった場合は、来年の確定申告で精算を行わなければならない。

 今回の減税は、物価の上昇を踏まえての措置だ。コロナ禍を抜けて世界的に経済活動が再開されると、需要の急拡大でエネルギー資源や原材料の価格が高騰。円安も進んだことで、輸入物価が跳ね上がった。

脱「増税メガネ」?

 政府の要請もあり大手企業は賃上げに踏み切ったものの、中小企業にはまだ浸透していないのが現実。物価上昇で生活が圧迫される世帯が急増し、税収の一部を国民に還元することになったわけだ。もっとも、この救いの手は遅きに失するものだったとファイナンシャルプランナーの深野康彦さんは指摘する。

「今年1~3月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比でマイナスに陥りました。これは、リーマン・ショックの前後以来15年ぶりに個人消費が4四半期連続で落ち込んだことが主因です。物価上昇が深刻化した昨年の時点で速やかに手を打っていれば、個人消費がここまで落ち込まなかったかもしれません」

 後手に回ってしまったのは、減税という形式を選択したことが影響しているようだ。コロナ禍で実施したように、給付金として広く国民に分配する策のほうが明らかに手っ取り早い。ところが、岸田文雄首相は「増税メガネ」と揶揄されたことをよほど根に持っているのか、減税という手段に固執した。