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一方、所得税や住民税が非課税となっている世帯については、定額減税とは別に給付金支給制度が設けられる。住民税の非課税世帯は昨年に「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」として3万円が給付されていたが、新たに7万円が追加される見通しだ。
コスパの低い政策
これに対し、所得税が非課税で住民税の均等割のみ課税だった世帯は、前述した3万円の給付を受けていなかった。しかし、今回の定額減税を踏まえて、そういった世帯にも10万円が給付されることに。さらに、所得税・住民税が非課税の世帯、住民税の均等割のみ課税の世帯で18歳以下の子どもがいる場合は、1人につき5万円が追加される。
大半の国民を対象とした定額減税と給付金には、当然ながら膨大な予算がかかっている。問題は、そのコストパフォーマンスだ。野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英さんは次のような見解を示す。
「今回の合計5兆1080億円の減税および給付の経済効果を試算すると、1年間で実質GDPを+0.19%押し上げることになる。結局は国民負担となる5兆円という巨額の資金を使いながら、1年間の景気浮揚効果は+0.19%と限定的であり、費用対効果の低い政策と映る」
GDPの押し上げ効果がここまで低いのは、今年のみの実施という時限措置だからだ。恒久化や延長を求める声も出ており、自民党の木原誠二幹事長代理はテレビ番組に出演した際、「またデフレに戻る可能性があるなら、来年も考えなければいけない」と発言。減税を継続する可能性について言及した。
しかしながら、すぐさま林芳正官房長官は慎重な姿勢を表明。鈴木俊一財務相も記者会見で、1回限りとする従来の政府方針を強調している。景況感がさらに悪化するなど、政府が危機感を強めない限り、減税は今年限りのものとなりそうだ。
将来の国民負担増へ
経済政策としての効果はさほど期待できないことだけでなく、「結局は国民負担となる」との木内さんの指摘も気に留めておくべきだろう。目先では年間4万円の減税を受けられるが、その予算には税金が投じられているうえ、いずれは国民からその分が回収されるのが必至だろう。