岸田首相肝入りの「定額減税」が6月から始まる。実はこの定額減税、複雑な仕組みゆえ、注意しなければならない“落とし穴”がある。人によっては、受けた減税をあとから返金しなければならないケースも……。今回は、定額減税の押さえておくべき注意点について解説しよう。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)
実施直前で「減税の恩恵を明記せよ」のお達し
総理、ひどいことをしますね!
隔週木曜日公開の本コラム、今回は6月から始まる「複雑怪奇な定額減税」について書こうと考えていた。
仕組みを調べる過程で「給与から天引きされる“減税前の本来の税額”を知っている人などほとんどいない。だとすると、減税後の天引き額だけ提示されても“減税のありがたみ”を感じないだろう」と思った。それが月曜日のこと。
火曜日、原稿を書くタイミングで「岸田文雄首相は20日の自民党役員会で、6月に実施する定額減税に関し『減税の恩恵を国民に実感してもらうことが重要で給与明細へ明記されるようにする』と述べた」というニュースが配信された。
減税言い出しっぺの政治家としては、「ありがたみ」を実感してほしいのだ。気持ちは分からなくはないが、実施目前の今のタイミングで指示を出すとは、遅すぎないか。
給与明細に「本来の天引き税額」と「減税額」を両方明記するには、システムの変更が必要だ。
事務作業面でもコスト面でも負担が重くなるが、それらは企業が担わなくてはならない。しかも、数週間以内での対応を迫られている。
総理、ひどいことしますね!というのが率直な感想だ。
給与計算をシステムでするにせよ、手計算でするにせよ(小さな会社はシステムなどない)、急なお達しなので人的ミスが発生するかもしれない。仕組みを知った上で、6月以降の給与明細をよくチェックする必要があるだろう。
また、今回の定額減税では、いったん受けた減税額を年末調整や確定申告で返金しなくてはいけない“落とし穴”と言ってもいいくらいの不可解なケースもある。
どんな人が要注意なのか。
定額減税の仕組みと注意点を解説しよう。