4月、わが国の主要な食品メーカー195社は、2806品目の商品価格を引き上げた。7月までの価格改定予定を含むと、年間の平均値上げ率は19%にも達する。実は、6月に再び値上げを予定する企業も多く、その分野は対企業向けの資材から食品まで幅広い。円安の進行や原油価格の上昇リスクが増しているため、今後も国内企業による値上げは増えそうだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
インフレは社会全体の格差を拡大する傾向
2024年も「値上げの4月」が到来した。ハムやソーセージなど加工食品、調味料などの飲食料品を中心に、約2800超の品目の値段が引き上げられた。異常気象や地政学リスクなどもあり、原油や穀物などの原材料価格は上昇している。また、円安も輸入物価を押し上げている。
さらに人手不足も深刻だ。規模の大小を問わず、企業は賃上げに取り組まざるを得ない状況に直面している。働き方改革の一環で物流に支障が出るなどの、いわゆる「2024年問題」も人件費を押し上げる。増えたコストを販売価格に転嫁する企業は増え、広い範囲でモノやサービスの価格が上昇している。
わが国の物価は当面、上昇圧力がかかる可能性が高い。堅調な米国景気を反映して、ドル高・円安が続くことも予想される。中東情勢の混迷や一部産油国の自主減産などもあり、原油などエネルギー価格はさらに上昇する可能性が高そうだ。
わが国経済がデフレから脱却するのは良いことだが、短期的には、物価が賃金を上回って上昇すると、私たちの生活は苦しくなる。特に、所得水準が相対的に低い世帯では生活の負担感が増すだろう。一般的に、インフレは社会全体の格差を拡大する傾向がある。デフレ脱却に伴い政府は、“持たざる者”の生活苦が過度にならないようセーフティーネットの構築が急務である。