子どもの頃に「おとなしい」と言われて嫌な思いをした方は多いのではないでしょうか。言っているほうは悪気はなくても、「おとなしい」という言葉にはどこか否定的な響きがあります。「内向的」という意味合いが込められている場合が多いからです。「外向的」な性格で悩んでいる人には会ったことがありませんが、「内向的」であることはよくないことと世間では受け止められてきました。しかし「内向的」な性格にも長所はたくさんあるのです。世界の大富豪イーロン・マスク、「ハリー・ポッター」シリーズの生みの親JK・ローリング、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズなど、世界の偉人とも言われる多くの成功者は、子どもの頃に内向的な性格でした。一人で深く思考を重ねるのが好きでした。だからいじめの対象になることも少なくありませんでした。しかし彼らは、ある時点で自分を成長させ、自分の良さを保ったまま、世に出ることができたのです。本連載では、最新の脳科学研究から明らかになった、「おとなしさの真実」とさまざまな「性格をリセットして成長させる方法」をお伝えします。

【脳科学の新常識】外向型の人はなぜ「ポジティブ思考」になりやすいのか?

深く考えない外向型は恐怖学習をしづらい

 あなたは、勇気を持って新しいことにチャレンジしてみました。そして、いざやってみたら、思いがけず「大成功」しました。とても大きな喜びを感じます。

 次も新しいことにチャレンジしてみたら、再びうまくいってお金まで入ってきました。自信がついたあなたは、さらに新しいことをやってみますが、やればやるほど成功して喜びを感じます。

 すると、あなたは「新しいことにチャレンジすること」をどのように感じるでしょうか?

 このとき多くの人が「新しいことにチャレンジすること」=「よいこと」だと脳の中で結びつくため、「チャレンジは楽しい!」と感じます。

 これが「快感学習」です。脳の中で「新しいことにチャレンジ」=「快感」という学習が起きるため、新しいことにチャレンジすることが好きな性格だと思えるようになるのです。

 実際はもっと複雑なメカニズムになりますが、簡単に説明すると、嬉しい出来事や体験をしたとき、脳の中で報酬系と呼ばれる「腹側被蓋野」と「側坐核」という場所が活性化します。人にほめられたり、お金をもらったり、何かいいことがあると発火する場所です。

 自分の行動がうまくいったら大きな「快感」を感じるため、記憶の中枢の海馬も活性化しやすく、最終的に「大脳新皮質」の「長期記憶」に快感の記憶が蓄積されやすくなります。

 これが「快感学習」のしくみです。

 この「快感学習」の恩恵を最も大きく受けているのが、外向型の人たちと言われています。

 外向型は脳の報酬系が活性化しやすいため、小さな出来事でも快感を感じやすく、快感学習をしやすいことがわかってきています。

 たとえば「人前で話したら、ほめられる」と、「人前で話す=楽しい!」という快感が内向型よりも大きく感じられるため、もっと人前で話したくなる性格になります。「また楽しいことがあるかも」と、もっと積極的な行動をしたくなっていきます。

 しかも、外向型は内向型ほど恐怖学習をしにくいと考えられています。なぜなら、深く考えないため、嫌なことが起きても扁桃体があまり活性化しないからです。

 外向型=快感学習が多い+恐怖学習が少ない→前向きな性格になりやすい

 こういったしくみで、外向型の人は一般的に明るい性格がより強化されていきます。

※本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです。