オリエンタルランドPhoto:Bloomberg/gettyimages

上場企業が保有する「虎の子株」への売却圧力が強まっている。今月開催される株主総会では複数の企業が物言う株主から政策保有株式などの売却を迫られており、日本企業の株式持ち合い文化が崩壊に向かう予兆が表れている。「夢と魔法の王国」の株式を巡る攻防戦から、その実情に迫る。(ダイヤモンド編集部 副編集長 重石岳史、田中唯翔)

浦安沖を埋め立て一大レジャーランド建設
東京ディズニーリゾート「生みの親」の物語

 東京ディズニーリゾート(TDR、千葉県浦安市)を運営するオリエンタルランド(OLC)が設立されたのは、1960年のことだ。初代社長は当時京成電鉄社長の川崎千春氏。谷津遊園(千葉県習志野市)に新設するバラ園のために米国を視察した際、55年に開業したばかりのカリフォルニア州のディズニーランドを見て感激し、日本への誘致を決意した。

「夢と魔法の王国」の建設のため、川崎氏が誘ったのが、旧制水戸高校と東京帝国大学の同窓だった当時三井不動産社長の江戸英雄氏だった。2人が中心になって「オリエンタルランド設立計画趣意書」をまとめ、目論見書では「浦安沖の海面を埋め立て、商住地域の開発と一大レジャーランドの建設を行い、国民の文化・厚生・福祉に寄与する」とうたわれた。

 OLCは、当時の京成本社に事務所を間借りし、川崎氏らは埋め立てに伴う漁業補償交渉や米ウォルト・ディズニー・カンパニーとの交渉に奔走。東京ディズニーランドが日本初の本格的テーマパークとして開業したのが83年のことだ。

 それから41年。OLCが運営する東京ディズニーリゾートは年間3000万人近くが来園する日本最大のテーマパークに成長した。OLCの2024年3月期決算は史上最高益を更新し、時価総額は8兆2000億円を超え、ホンダに次ぐ国内23位の規模だ。

 京成は今、OLC株式を約20%持つ筆頭株主である。京成OBの加賀見俊夫氏が95年にOLC社長に就き、88歳の現在も取締役会議長として絶大な権力を持つ。OLCも京成株を3.6%保有し、両社は互いに株式を持ち合う“蜜月関係”を長年続けている。

 だが、その慣行に異を唱える者たちが現れ始めた。それは京成とOLCとの関係だけではない。上場企業が持ち合い株を指弾され、下手をすれば経営者が解任される事態も起きかねない。

 実際、その予兆が見え始めている。次ページで詳しく見ていこう。