正社員の早期退職募集、非正規社員には退職勧奨……。コロナ禍で省人化の動きが目立つ東京ディズニーリゾート。一方、5月にリニューアルオープンした西武園ゆうえんちは、「人情」を押し出す。特集『埼玉vs千葉 勃発!ビジネス大戦』(全10回)の#6では、埼玉と千葉を代表するテーマパークの最新戦略に迫った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
正社員の早期退職、非正規社員への退職勧奨…
OLC株主は「会社の汚点」と非難
「どこをどう見ても、早期退職の募集でしたよね」――。オリエンタルランド(OLC)の内部関係者はこう苦笑いする。
新型コロナウイルスの感染拡大で危機に陥っているテーマパーク業界。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によれば、2020年度の国内の遊園地・テーマパーク産業の売上高は2206億円で、前年度比34.4%と6割以上も落ち込んだ。
4000億円以上の市場が吹っ飛んだ業界で、千葉県どころか日本を代表するテーマパークである東京ディズニーリゾート(TDR)で話題を集めるのは“リストラ”だ。
TDRなどを運営するOLCが、20年10月1日から21年1月31日にかけて実施した「ネクストキャリア支援プログラム」の拡充施策。対象は満45歳以上かつ勤続10年以上の正社員と嘱託社員で、通常の退職金に加えて、割増金が上乗せされた。55歳以上の割増退職金が月給の36カ月分と、55歳未満に比べて多かったことから、人件費の高い定年間際の社員がターゲットとされた(詳細は『ディズニーリゾートもついにリストラ…オリエンタルランドで正社員の早期退職募集【スクープ】』参照)。
OLCは「従来から会社にある仕組みで、コスト削減のための早期退職施策ではない」と説明しているものの、コロナ禍の業績不振を受けて、今後を見据えたコスト削減を目的にした早期退職の募集と受け取るのが普通だろう。
20年9月ごろにも、OLCは非正規社員に対して事実上の退職勧奨を行っている。OLCのある株主は、「経営が苦しいといっても、ものすごい内部留保がある。なのに、立場の弱い人たちの雇用の調整でコストカットを行うのはいかがなものか。会社として“汚点”を残してしまった」と指摘する。
OLCの21年3月期の売上高は前期比63.3%減の1706億円。最終損益は542億円の赤字で、1996年の上場以来初となる最終赤字に沈んだ。ただし、財務の健全性を測る自己資本比率は73.0%と高い水準をキープしているため、前出の株主が指摘するように財務の健全性はまだまだ盤石だ。
それでも、コスト削減にまい進する背景には、国内レジャー業界の“王者”ならではの苦しみがある。