鉄鋼業界は未曽有の苦境と言われている。そんな中でも、日本製鉄、JFEはいずれも2024年3月期では増益を果たした。特に日鉄は、過去最高益をたたき出している。ところが、25年3月期の見通しを見ると、両社で明暗が分かれていることが判明する。来年以降、真に「勝ち組」となるのはどちらなのか。トップメーカーの日鉄を追う2番手JFEによる下克上はあるのか。日鉄、JFEの決算データや内部の声を取り上げながら、鉄鋼大手2社の「2年後の優勝劣敗」を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
「未曽有の苦境」の鉄鋼業界
23年度は日鉄もJFEも増益だが…
中国勢の安値攻勢などにより「未曽有の厳しい経営環境」と言われる鉄鋼業界。原材料価格が上がっても、鉄鋼メーカーは鋼材価格を上げにくく収益性の維持が困難になっているのだ。
そんな中にあっても、国内鉄鋼大手の日本製鉄とJFEは、コスト削減などが奏功し、共に24年3月期決算で増益を成し遂げた。日鉄に至っては、実力ベースの連結事業利益で過去最高益をたたき出している。
この勢いのまま、日本の鉄鋼業界全体が今年度以降も成長軌道に乗っていくことを期待したいところだ。特に日鉄は、米鉄鋼大手のUSスチールの買収交渉が大詰めを迎えており、グローバルでのさらなるプレゼンス発揮に期待が高まる(USスチール買収については、特集『進撃の日本製鉄』の#2『日本製鉄の“USスチール2兆円買収”により日本勢が鉄鋼業界で復権?「グローバル1億トン戦略」の勝算』参照)。
だが意外にも、鉄鋼大手2社の25年3月期の収益見通しでは、明暗が分かれる。片方は増益を見込むが、もう一方は減益予想なのだ。
今後、真の勝ち組となるのはどちらなのか。トップメーカーの日鉄を追う2番手JFEの下克上はあるのか。
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