「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』の著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのは、FIDIAの執行役員CHRO(最高人事責任者)であり、グループ会社の人材事業「Evand」で代表を務めている石田優太郎氏。「人の辞めない人材会社をつくりたい」という想いを胸に、ついにはEvandの年商を65億円まで成長させたキーマンだ。今回は、そんな石田氏に、仲間を成長させるルールと仕組みについて聞いた(ダイヤモンド社書籍編集局)。
「成長の定義」を言語化せよ
――本書に「仲間を成長させる」という章がありますが、FIDIAの数ある事業部の中でも、社員数・売上が飛び抜けているのがEvandです。
2020年7月に設立して約4年にもかかわらず、売上高65億円、全国に7拠点を運用中というのは、まさに「超成長」。企業や仲間が成長するためには、何が必要だと思われますか?
石田優太郎(以下、石田):Evandでは「成長」というキーワードをとても大切にしています。
成長の定義とは何でしょう?
当社では、「できなかったことができるようになること」と言語化しています。
現在、約150人の内勤社員がいますが、このキーワードと定義をいえない社員は一人もいません。
では、どうやって成長を“発生させるのか”。
第1ステップは「できなかったことを明確にすること」。
たとえば売上目標1000万円に対して、結果が800万円の場合、200万円未達だったとします。その場合、「何が・なぜ・どれくらいできなかったのか」をきちんと出すわけです。
第2ステップでは、目標達成のために、具体的にどのような行動を取るべきなのかを明確にする。それがわかれば、後は実行するのみなのです。
ただ、簡単にこう言っても、目標と期限を明確に設定するのは、意識していないと相当難しいものです。
上司の「最悪の伝え方」とは?
石田:たとえば上司から部下たちへ「それぞれ〇日(明後日)までに企画書をメールするように」と言われたとします。
あなたが部下の一人だとして、締切は明後日の何時までだと思いましたか?
会社の定時が19時なら、19時と思う人もいるでしょうし、明後日中と判断して、日付が変わるギリギリまでOKと捉える人もいるかもしれません。
では、なぜそんなことが起こるのか。
ズバリ、上司の指示がまずいからです。
本人の中で事実は一つですが、上司がさまざまな解釈の余地がある「曖昧な指示」をしてしまった。これに尽きます。
上司と部下、誰の目からも認識がズレない指示・ルールを明確にすること。
この例では、期日を「〇日の〇時までに」と、明確にしないといけません。
あるいは〇日いっぱいでOKなら、「〇日の23時59分まで」と伝えるべきです。
さらに、「可能な限り早く」という漠然とした指示は最悪です。
「可能な限り」も「早く」も、個人の感覚で答えを出すことになるので、上司と部下の思考がまったく同じでない限り、認識にズレが生じますから。
実はこれらの考え方は、「完全結果」というものです。
完全結果とは、株式会社識学が提唱する組織マネジメント理論「識学」のワードの一つで、期限と状態が明確になっている状態のこと。
僕が識学を徹底的に学んで導入しました。
ただし、大いに学ぶ必要はありますが、どの企業にも効く“魔法の経営戦略”や“魔法のマネジメント”は存在しないと思っています。
まずは基本形を習得し、次に、独自の手法を生み出すことが大切。
当社と親会社のFIDIAでも、さまざまな施策を取り入れて取捨選択をしながら、オリジナルの理論・施策を完成させました。
その一つが日報・月報の活用で、社員一人ひとりの粗利を管理し、どれだけ粗利額に貢献したかが、本人も周囲も一目でわかるようになっています。
――それが成長の指針になると。本書『スタートアップ芸人』にも、「KPIをきちんと示せば、社員は日々改善しようと努力してくれるものだ」と具体策が書かれていますね。
石田:はい、ビジネスシーンで「努力の割に結果が出ていないのかも」と思ったら、意味のない空回りの努力をしているからかもしれません。
『スタートアップ芸人』では、実際の図表を用いてKPIをきちんと設定したことでどのように結果がついてきたかについても詳しく紹介しています。努力と結果が結びついていないと感じる方には、参考になると思います。