昨今のトレンドの変化はめまぐるしく、画期的な技術革新があれば、業界構造を一変させることすらあります。「過去にはこうであったのだから、今後もこうであるはずだ」という仮説は、あくまでひとつの視点によるものであり、材料の一部としてとどめておきましょう。

 思い込みに振り回されないための素地となるのは、疑う力、すなわち自ら疑問を抱ける思考力です。

 人生の前半戦、10~30代の学習期において勉強にしっかりと本腰を入れた経験がある人は、思考力と直感がバランスよく鍛えられているように見受けられます。ところが、そうした経験がある人でも、過去に成功体験をもっている人は、前提を疑う力が弱い。世界が順当に続いていくことを疑わないからこそ、「90年続いてきた老舗企業なのだから、91年目も安泰だろう」という発想になってしまうのです。

 けれどもゴールドマン・サックスと組んで金融業に本格進出したアップルのように、脅威は業界の外からもやってくる時代です。

 自らの思い込みや仮説にとらわれすぎないよう心にとどめておきましょう。