グーグル元社員が教える、「データ分析で結果を出す人」に共通する“意外な能力”とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

データ分析で重要なのは、細部へのこだわりと俯瞰する視点、両方のバランスだ。そしてビジネスに有用な予測を立てるには、過去の経験則にとらわれず、目の前の数字=事実を読み解く冷静さも欠かせない。本稿は、山本康正、松谷恵『外資系データサイエンティストの知的生産術 どこへ行っても通用する人になる超基本50』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです。

“データそのもの”の
周辺にも目を向ける

「データサイエンティストは、やっぱり細かいことが気になる神経質なタイプが多いのでしょうか。自分は統計学なんてまったくわからない大雑把なタイプだから、そうした分析には向いていません」

 さまざまな企業やチームと組んでデータ分析プロジェクトを行っていくと、こうした問いかけを投げかけられる機会が意外と多くあります。

 これは半分正解で、半分間違いです。なぜなら、おおらかさと精緻さ、データ分析にはどちらの素養も必要になってくるからです。

 細部にまでしっかりと目が行く人は、データの欠損や異常値などの違和感に気づきやすいのが強みです。しかし、それだけでは細部にばかり目を奪われて視野が狭くなり、全体や傾向を見誤るという弱点があります。

 データサイエンスは比較の学問でもあります。あるデータから考察できることがあまりない場合は、他のデータと掛け合わせるなどして使えるデータを充実させ、事象理解の解像度を深めていきます。比較軸を内包するデータを取得できれば、それだけ洞察も洗練されていきます。

 一方、おおらかであることは、言い換えれば細部にとらわれすぎない、俯瞰したものの見方もできることでもあります。対象との間に距離があるため、一歩引いた視点から、大枠をつかめるのが強みでしょう。

 この全体像を捉えるという俯瞰の視点もまた、データを正しく役立て、アウトプットの質を高めるためには欠かせない要素です。

 データそのものだけでなく、その周辺にはたくさんの背景や前提などの要因が入り乱れています。

 業界の構造、市場や顧客の特性、競合他社の動き、社会の動向など、データに影響を及ぼすさまざまな要素を把握することなしには、数字から因果関係や相関関係を見つけ出すことは困難です。

 大枠がつかめるようになれば、データから読み解ける事象の解像度は格段に上がるはずです。

 細部を見る目と、大枠をつかむ目。これらは一見すると相反する性質に思えますが、意味のあるアウトプットを現場に届けられるデータサイエンティストの多くは、この双方の視点を兼ね備えています。