「IPDACサイクル」を実践して
多角的な視野を養う

 細部を見る目と大枠をつかむ目は、生まれ持ってのセンスではなく、後天的なトレーニングによって身につけることができます。

 解決する課題を把握する(Issue/課題)→仮説をもとに計画を立てる(Plan/計画)→データを収集する(Data/データ収集)→データを分析、検証する(Analysis/データ分析)→分析結果を提示する(Conclusion/結論)。

 このIPDACのサイクルを実践で繰り返していけば、細部を見る目も、大枠をつかむ力も、自然と底上げされていきます。筋トレをすれば筋肉がつくように、実践を繰り返せばデータを見る目も磨かれるからです。

 そういう意味では、ITリテラシーの高い新卒社員と、現場経験の豊富なベテラン社員がデータを読み解くスキルを身につけたときに、より現場で役立つのはどちらかというと、もしかすると後者かもしれません。

 分析ツールの発展により、データサイエンスにおける導入編としての基礎知識や分析スキルはある程度までほとんどの人が習得可能なものですが、ビジネスの知見や現場経験、それによって裏打ちされた洞察力や読解力、経営のセンスなどは一朝一夕には身につかないからです。

 データから浮かび上がる数字のすべては、材料のひとつに過ぎません。それは、意思決定を補佐する材料です。

 データ分析をすることで現状を把握し予測を立て、数字を根拠として経営層などにプレゼンし、最終的には意思決定者のゴーサインを勝ち取って実際のアクションにつなげる。組織の意思決定のためのツールとして、データサイエンスを活用する。それこそがアウトプットの目的と言えるでしょう。

 ビジネスの知見をベースに、目的を見据え、データサイエンスを「道具」としてうまく使いこなせる人材。これからの時代に求められるのは、そうしたビジネスパーソンです。

「こうなるはずだ」
の思い込みは危険

 先入観、直感、主観、経験則。

 これらはときに判断力を鈍らせ、アウトプットの精度を下げる危険な要因にもなりえます。

 先入観は知識や経験則に基づいたものの見方であり、直感や主観も役に立つ局面では大いに役立つのですが、データサイエンスの現場においては取り扱いにとても注意が必要です。