なぜなら、それらに基づく予測、「~となるはずだ」「きっとこうに違いない」という仮説に固執すると、分析方法や結果をときに歪めてしまいかねないからです。

 課題を設定し、必要なデータの要件を決め、収集し、整理する。

 ここまではおおむねインプットの領域でしょう。ですが、データサイエンティストの真価はアウトプットが伴ってこそ最大限に発揮されます。

 ビジネスの現場において実証性を持つ予測を立てる、問題の把握や解決への糸口を見出す。このアウトプットの力こそが、ビジネスの現場において最も求められています。

 ビジネスの現場は、数学の問題とは違います。ビジネスの課題という「問い」と、解決策という「答え」の間にあるのは、決して一本の直線ではありません。不特定多数の糸が、複雑にからまりあっている、そんな表現のほうがより現実に近いでしょう。

 そもそも解決策が必ず存在するとも限りません。

 だからこそ、アウトプットを前提としてデータに向き合う際には、常にファクトを再確認する冷静さが必要になってきます。

「きっとこうなるに決まっている」
「このやり方であればうまくいくに違いない」
「この新製品は絶対当たるはずだ」

 一般に現場に近い人ほど、こうした思い込みにとらわれる傾向があります。

 しかし、データ分析では、そうした希望や願望に引っ張られず、フラットに数字というファクトを見つめて分析する力が重要になります。

 現場の担当者がどれだけ情熱的で誠実な善人であろうとも、そうしたパーソナリティの部分はいったん脇においてください。

 もちろん、現場の情熱はプロジェクトをやり切る力やひいてはその成功とも直結しているため必要不可欠なものですが、データサイエンスの価値はそこではなく、そのプロジェクトの実行において役立つ洞察や示唆を届けることです。

90年続いた歴史は
91年目で終わるかもしれない

 経験値はアドバンテージであり、経験の蓄積に厚みがあるほどビジネスを見る目の精度も上がります。ただし、注意したいのは、経験値は常に過去の経験に由来するという事実です。