本当の金の使い道
いまはもう考え方が昔とだいぶ変わったよ。香港の家には物がありすぎて、倉庫何個分にもなるから、だんだんと負担に思えてきた。君が見たらびっくりすると思うよ。いま、上海で自分の博物館を作り、「成龍電影芸術館」と呼んでいる。40数年で使ってきたすべての映画小道具・大道具を中に入れている。コンテナ計47個分、すべて芸術館にある。もちろん、展示する前に、金を出して、壊れた物、自転車とかバイク、車、ヘルメット、メガネなどを直している。いつかは別の場所で、「成龍世界」という記念館を建てて、そこに自分の全コレクションを入れて展示したいと思う。購入した古い家屋とかは、シンガポールに寄付した4棟以外も、いつかはすべてどこかに寄付するつもりだ。
とにかく、昔は何でも買いたかったが、いまは何でも寄付したいと思う。これらすべてのものをジェイシーはいらないと言う。徐悲鴻の絵だけがほしいと言う。欲しいならあげようと思う。じつは、十数年前に、すでに全財産の半分を、慈善基金会に寄付している。
自分のことを幸運だと思っている。有名になった後は、すばらしい家庭に恵まれた。ジェイシーはもう自分で稼げるし、妻は最初から金持ちだ。彼女も息子も、こっちの金など必要ないだろう。いまは、会社の運営資金と家族の各種の支出を払って、彼女達にあとの心配さえ残さなければ、後はひたすら寄付するだけだ。
金持ちが死んだあとに、遺族が財産を争う場面をたくさん見てきた。母親が息子を訴え、息子が娘を訴える。自分の家族がそうなるのは絶対に嫌だ。いまの目標は、死んだときに、銀行の貯金がゼロになることだ。
(本原稿は『永遠の少年:ジャッキー・チェン自伝』から一部抜粋、追加編集したものです)