決算シーズンがひと段落しました。2015年3月期でひときわ話題を引いたのは、10億3500万円という巨額の役員報酬を受け取ったカルロス・ゴーン日産社長兼CEOではないでしょうか。今回ご紹介する『ルネッサンス――再生への挑戦』には、彼の半生が事細かく書かれています。その内容を少しお見せしましょう。

役員報酬はトヨタ社長の3倍!
人気が衰えないカルロス・ゴーン氏

カルロス・ゴーン著、中川 治子訳『ルネッサンス――再生への挑戦』2001年10月刊。日産リバイバルプランの成果が出始めた頃に刊行され、大きな話題となりました。

 6月23日に開かれた日産自動車の株主総会――。フランス・ルノーのCEOも兼務する社長兼CEO、カルロス・ゴーン氏への巨額報酬が話題となった。2015年3月期に支払われた役員報酬は米ドルベースでは前期の980万ドルから840万ドルに減少したものの、日本円ベースで10億3500万円と初めて10億円の大台にのったのである。

「史上最高益のトヨタ(2015年3月期の豊田章男社長への報酬は約3億5000万円)の3倍近くでは」といった不満の声も聞かれたが、総会後の懇親会では、記念写真を撮ろうという株主に囲まれ、いつもどおりの人気ぶりだった。

 1999年3月、ルノーとの資本提携に伴って日産に送り込まれたカルロス・ゴーン氏は同年6月にCOOに就任、10月には日産リバイバルプランを発表し、2001年3月期には同社業績をV字回復させる離れ業をやってのけた。

 一時、倒産危機も取りざたされた日産。ルノーとのと提携当初は「弱者連合」とされ、「提携はうまくいかないだろう」と見る向きが多かったものである。

「本当にできるのか?」という疑いの目を撥ね退け、「3つの必達目標(注)のうち、いずれか1つでも達成できなければ辞任する」(注:(1)2000年度の黒字化、(2)2002年度営業利益率を最低4.5%へ、(3)2002年度有利子負債は7000億円以下に)と宣言。「私はこの目標達成にすべてをかけている」と言い切っていた。

 ゴーン氏の後、ソニーのハワード・ストリンガー氏、日本板硝子のスチュアート・チェンバース氏、オリンパスのマイケル・ウッドフォード氏と次々と登場した“外国人社長”はそれぞれ引責辞任、短期退任、解任の憂き目に会あっている。彼らと違ってゴーン氏は必達目標を前倒し達成し、内外の信頼を勝ち得た“プロの経営者”だった。そんな彼の自伝が本書『ルネッサンス――再生への挑戦』である。