買い物中毒

 世界的に有名になった後は、いろんなブランドといっしょにコラボ商品を出すのが好きだった。ジャッキー・チェンのワイン、ジャッキー・チェンのスーパーカー、ジャッキー・チェンのメガネ、ジャッキー・チェンの服……というように、ブランドがときどきジャッキー・チェンの限定版を出してくれる。売れ行きもいいが、本当に限定数しか作らないから、売り切れたら終わり、ということが多い。するとすぐに売り切れてしまって、自分で買えなくなるのが怖くなり、世界中からまた買い集める。

 ワインのときにそれを1回やって、プレミアがついていたから、定価の数倍の値段で買ったりした。好んでよく掛けていたコウモリデザインのサングラスも、最初は2つのブランドがいっしょに出してくれたが、追加で作ってほしいと言うと、その二つのブランドのあいだで齟齬が生じ、仲違いしたから、作れなくなった。それで、出回っている物をぜんぶ買い取った。いま、このメガネを持っているのは僕だけで、もうどこにも売っていないはずだ。

膨大なワインコレクション

 いま考えると、こうやって物を買っているのは、子どもの頃貧乏だったからで、貧乏のせいで苦労したことをぜんぶ補おうとしているんだろう。だから何でもほしくなれば買い、しかもたくさん買ってしまう。ワインを買うときは、いつも蔵元の倉庫にある物をぜんぶ買う。飲むためではなく、自分の家の酒蔵を埋めるためで、埋めた後はそのまま動かさないし、飲みもしない。飲みたいときは別のところからまた買ってきて飲む。

カップとソーサーのコレクションも膨大だ。1ヵ月で1200個買ったこともある

 本を買うのにハマった時期もあって、家にある大きな本棚をぜんぶ埋めた。家をリフォームしたときは、海外からリフォームの雑誌を3冊ずつ買い、本棚に1冊置き、自分で1冊見て、デザイナーにも1冊見てもらう。これでやっとコミュニケーションが図れる。ああいう洋書はみんな高いんだよ。

 本当を言うと、いま本棚にある本はほとんどすべて、買ってきてから一度も読んだことがない。よく覚えているのは、昔、メディアが家に取材に来たとき、事務所の人に本を何冊か選んで取りだしてもらっては、透明なカバーを剥がし、わざと中にしおりを挟んだりして、あたかも読んでいるかのように見せようとしたことだ。自分が持っている本はぜんぶ飾りだと見抜かれるのが怖かったのさ。