大企業神話や正社員神話が崩れた現代において、会社での肩書きにあぐらをかいているだけの平凡な社員は、いつその立場を追われるかわからない。リクルートの初代フェローが、価値ある人材として社会を生き抜くための具体的な戦略を解説する。本稿は、藤原和博『どう生きる?――人生戦略としての「場所取り」の教科書』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。
「寄らば大樹の陰」は通用しない
「社内自営業者」を目指そう
終身雇用や年功序列といった標準化されたシステムが存在していた日本における「会社」で、社員が懸命に働いたのには理由があります。
社員の間に、在職期間(仕事寿命)より、会社の寿命のほうが長いという共通認識があったからです。だからこそ、誰もが会社に生涯身を寄せようとしたし、懐かしい言葉ですが「寄らば大樹の陰」で、大企業に入りたがった。そして、一度入ってしまえば自動運転で、何も考えずに最後までいられました。
しかし、状況は大きく変わりました。
バブル崩壊後は大企業の倒産が相次ぎ、高齢化に伴って定年も延びた。自分の仕事寿命より会社の寿命のほうが短いことに、多くの人が気づき始めたのです。
会社が潰れなかったとしても、部署ごとなくなるケースも増えています。
組織を筋肉質にするため、メインではない事業、不採算の事業を他社に売却することがこの30年、有名企業でもごく普通に行われてきました。
部門ごとに会社を分けて事業会社にし、何の事業をしているかを明確にする会社も増えました。それぞれの事業会社に社長や取締役がいて、全体で持株会社やホールディングスを作る。こうなれば、事業会社ごと売却することは難しいことではありません。
時代の変化が速くなり、事業がすこし傾いたらコンセプトそのものを変えていかないと、企業が生き残れなくなっているのです。
つまり、会社の寿命が短くなっただけでなく、事業のライフサイクルが短くなり、自分の仕事寿命のほうが長いという逆転現象が起きている。
こうなると「寄らば大樹の陰」は通用しません。組織に所属していても、「頼れるのは自分の能力しかない」という覚悟が求められます。
自動運転をやめ、自分のポジショニングを戦略的に考えなければならなくなったのです。
「そうはいっても、何から始めればいいのか……」
そう感じている人も少なくないでしょう。そこで私がおすすめするのが、組織内「自営業者」という意識を持つこと。