株主総会2024#6Photo:Westend61/gettyimages

創業者とその孫の“お家騒動”が勃発した電子部品メーカーのシライ電子工業。孫で前社長の白井基治氏は4月、社長職を不当に解職されたとして、自身の取締役復帰を求める株主提案を出した。だが、それを会社が受け付けなかったことが分かった。一体なぜか。そのカラクリは、株主総会の「変なルール」にある。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

前社長の株主提案を受け付けない
シライ電子工業の「手口」とは?

「ご請求には応じかねますので、本書をもってご連絡いたします」

 電子部品メーカーのシライ電子工業前社長、白井基治氏の元に、そんな内容証明が届いたのは5月9日のことだ。差出人はシライ電子工業。かつての職場である。

 白井氏は3月14日、社長職を突然“クビ”にされた。

「当社代表取締役社長の白井基治氏は、威圧的態度で適正な取締役会の議事運営を困難にし、監査等委員会の監査範囲の制約をはじめとする重大な法令・定款違反を行う恐れが高まった」。シライ電子工業は白井氏の解職理由をそう公表し、五藤学氏が同日付で後任社長に就任した。

 だが、白井氏には「重大な法令・定款違反」を犯した覚えはない。

 時価総額1兆円の目標を掲げ、確かに年長の役員らに「成果」を求めはしたが、解職のトリガーとなったのは、創業者で祖父の治夫氏への月額100万円の顧問料支払いを打ち切ろうとしたことにあると考えている。詳細は『【独自】創業者(89)vs孫(32)の骨肉バトル!シライ電子工業で孫の前社長が株主提案、超異例「お家騒動」が勃発した理由』の通りだ。

 そこで白井氏は4月25日、父親と姉、そして治夫氏の一人娘である母親の家族4人の連名で、自身の取締役選任を求める株主提案書を提出した。会社は26日に受領している。

 会社法で株主提案は、株主総会の8週間前までに請求することが定められている。3月まで社長だった白井氏は、今年は6月26日に株主総会が開かれると年間行事で予定されていたことを知っていた。その8週間前は4月30日だ。

 白井氏は期限に間に合うよう提出したが、冒頭の通りシライ電子工業はそれを受け付けないと通知した。なぜか。