株主総会2024#3Photo by Takeshi Shigeishi

製紙業界5位の北越コーポレーションが6月27日に開く株主総会で、大株主の大王海運が取締役選任を求める株主提案を出した。2012年に北越が大王製紙株を買い取った当時から続く両社の対立に、ついに株主の審判が下される。だが大王海運は、なぜこのタイミングで株主提案を行ったのか。3回連載「激突!12年目の決戦」の上編で、まずは同社の岩井正実社長の証言から、複雑過ぎる「12年戦争」の全貌をひもとく。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

大王海運保有の北越株を「買い取りたい」
岸本社長の発言にガバナンス上の疑念

――北越コーポレーションの株主総会で、大王海運は社外取締役5人の選任を求める株主提案を出しました。提案の目的は何ですか。

 コーポレートガバナンス(企業統治)が機能しているかどうかを問いたい。私たちは2013年から北越の株式を保有していますが、それは成長のポテンシャルがあると思っているからです。

 これまで株主として疑問に感じたことを株主総会で何度も質問してきましたが、納得できる回答をしていただけなかった。例えば岸本晢夫社長CEO(最高経営責任者)は08年からずっと北越社長の椅子に座られていますが、他の役員は2年や3年で解任されてしまい、後継者が育っていません。

 そうした疑念が積み重なる中で昨年7月、岸本社長から当社に「仲介者」を通じて接触がありました。うちの特別顧問である井川(俊高氏)と会食し、その後、当社に岸本社長が1人で来られた。

 そこで言われたのが、当社が保有する北越株を「買い取らせてほしい」ということです。具体的には23年中に半分を買い取り、残り半分を年明けから3月末の間に買い取らせてほしいという提案でした。

大王海運の岩井社長がインタビューの冒頭から口にしたのが、北越の岸本社長に対する「疑念」だった。その疑念が膨らんだのが、昨年7月の岸本社長による発言だという。だが発言を巡っては、北越側の主張と食い違う。次ページで岩井社長の言い分から見ていこう。