しかし、支援制度において中堅企業を中小企業と同列に扱うことには疑問が残る。大都市圏以外に所在する中堅企業の割合は中小企業より低い上に、中堅企業の生産性は中小企業の1.5倍近くある。このため、中小企業への支援を一律に中堅企業に拡大しても、地方経済への波及効果や生産性向上効果は小幅にとどまる可能性がある。

 さらに、中堅企業の固定資産対比で見たキャッシュフローは9.9%と、中小企業(同7.9%)に比べ+2.0%もの差があり、潤沢である。中堅企業全体で見れば、資金制約が設備投資や賃上げのボトルネックとなっている企業は少ない。

 このように中堅企業を取り巻く経済環境は、必ずしも中小企業と同じではない。費用対効果や予算の見積もりが十分に行われなければ、期待した政策効果を得られない上に一段の財政悪化を招く結果になりかねない。

 とはいえ、中堅企業の成長力強化は日本経済の活性化に不可欠だ。そのために政府が重視すべきことは、中小企業に対する支援制度を単に中堅企業に拡大するのではなく、中堅企業が抱える固有の経営課題に焦点を当て、支援策を策定することだ。

(日本総合研究所調査部 副主任研究員 村瀬拓人)