「中小企業は賃金が低い」は本当か?国際比較でわかった日本企業の“真の問題”写真はイメージです Photo:PIXTA

日本の中小企業の生産性は低く、それ故利益が上がらず、賃金が低いことが問題だとされているようである。しかし、本当の問題は何かについて、国際比較で明らかにしていきたい。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

雇用と売り上げにおいて
中小企業の比率が高い日本

 結論を先取りして述べれば、日本の中小企業の問題とは、中小企業の生産性が低いことと共に、生産性の低い中小企業の日本経済におけるシェアが欧米に比べて高いことである。

 データについては、幸いなことに、OECD(経済協力開発機構)が、中小企業と大企業の国際比較を行っている。表1と表2は、OECDの定義(従業員249人までが中小企業)により、主要国の中小企業と大企業を比較したものである。

 ただし、社数は全産業であるが、それ以外は全産業のデータが取れず、製造業である。製造業の他に、industry(except construction)(鉱工業+電気ガス水道となる)というデータがあるが、ここで比較対象とした全ての国では取れないので、製造業を用いた。比率で見ると、industry(except construction)と製造業とに大きな違いはなかった。以下、表1では、企業数、雇用者数、売り上げを見ていく。

 いずれの国でも中小企業は企業数で99%以上のシェアを占めているが、雇用に占めるシェアではイタリア、日本、韓国の60~70%に対し、スイス、イギリスの50%台後半、フランス、ドイツ、アメリカの30%台後半まで幅がある。また、売り上げを見ると製造業全体での売り上げに占める中小企業の比率は、フランス、ドイツ、アメリカの20%前後からスイス、イギリスの30%台後半、イタリア、日本、韓国の40~50%と幅がある。

 日本を除く7カ国の雇用に占める中小企業の比率(単純平均)は日本が64.3%なのに7カ国平均では53.3%、売り上げでは日本が44.1%なのに7カ国平均では33.3%と、いずれも10%程度日本が高い。つまり、日本は国際的に見て、経済の中で中小企業の占める比率が高い。