銀行で支店長の経験がある50代後半のIさんは、今まで多くの経営者の課題に向き合ってきました。当然、会社の決算書も見ることができます。過去の経験から、相談に来た会社が融資を必要としているのか、その前に経営の立て直しが必要なのか、会社の決算書を見るだけでわかってしまいます。

 Iさんは「数字を見ると会社の状態がすぐにわかります」と言います。長年の銀行での経験がそのスキルを育んだのは間違いありません。しかし、当の本人は「そんなことはできて当たり前、周りの人も普通にできていたから」と言います。しかし業界が変われば、銀行マンが周りにたくさんいて、数字を見ることができるのが当たり前という状況も変わります。

 今までいた世界から一歩出て銀行以外の世界に行くと、ご自身の「決算書を見ただけで会社の経営状態が手に取るようにわかる」といったスキルがキラキラと輝いてくるのです。

 もちろん、ご自身が今いる会社や今までの環境から一歩外に出ないと、そのことには気がつきません。ぜひみなさんには、外の世界に出る勇気を持ってもらいたいです。そして「自分のスキルは他の人と違ってどこが魅力的か」を探してみていただけたらと思います。

 とはいえ、自分で自分の良いところはなかなか発見できないもの。そのために志を同じくした仲間との勉強会が非常に重要になってきます。

将来に不安はありませんか?

 自分のスキルの特徴に早くから気がついて、コンサルタントとして活躍を始めている人がいる一方で、定年退職や役職定年を前にして、自分のキャリアをまったく考えていない人もいます。

 定年後は、「ゆっくり過ごしたい」「もう仕事は嫌だ」とおっしゃる方もいます。仕事をしていると毎日休みがあるなんて夢のようだ、と思うのでしょうが、休みが続くと、だんだんと不安な気持ちになってくる方もいます。

 定年退職して、一定の期間は旅行したり、趣味を満喫したりしたとしても、また仕事をしたいと思ったときに仕事ができるノウハウを身につけておけば、安心して自由な時間を満喫できます。

 毎日働いていた人が、外に出なくなったとたん、急に老けてしまうのを見ると、定年後に何もしない生活はお勧めできないな、と考えてしまいます。定年後環境が変わっても、毎日行くところがあって、やることがある毎日は、生活に張り合いが出るのだと思います。それがすなわち、若さにつながるのかもしれません。