つまり、読み書き計算能力が際立って高い生徒や評定平均値で上位を行く生徒は、総合型選抜入試での合格を目指さない、ということになる。

 総合型選抜入試が、各高校のトップ層以外による試験だと思えば、さらに希望が持てるはずだ。このファストパスは、想定以上の大学への合格を可能にするチケットと言えるかもしれない。

首都圏からの入学が増える
東大・早稲田・慶應

 東京大学、早稲田大学、それに慶應義塾大学の地域別合格者を見ると、年々、首都圏1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)の割合が増加傾向にあることが分かる。

 このうち、東京大学では6割前後、早慶ではともに7割程度が1都3県の高校出身者で占められている。

 首都圏の私立の中高一貫校のほうが地方の公立高に比べ受験用のカリキュラムがしっかりしていること、塾や予備校が豊富で対策を立てやすいこと、そして、「上がる物価、上がらない賃金」が続き、そこに新型コロナウイルスの感染拡大も生じ、地元志向が強まったことなどが背景にある。

 これは、全国から多様な人材を集めたい大学側にとって意に沿わない傾向だ。そのため、一般入試以外の部分で、地方出身者の割合を増やそうとしている。そこに、受験生やその保護者にとっては合格できるチャンスがあるのだ。

 早稲田大学社会科学部の総合型選抜入試、「全国自己推薦入試」では、わざわざ「全国」という部分を強調している。

 評定平均「4.0」以上で、学校外での諸活動や資格などでアピールできる高校生が出願することができる入試で、全国を7つのブロックに分け、各地域ブロックから5名程度の合格者を出す方式となっている。

 また、法学部、文化構想学部、文学部、商学部、それに人間科学部やスポーツ科学部で実施している「地域探究・貢献入試」では、文字どおり「地域」がキーワードになっている。

 9月上旬に出願をする一次選考の提出書類では、地域の課題として感じていることについてのレポートを課している。

 大学独自の二次選考や大学入学共通テストも課すので、相応の学力は不可欠だが、地方の高校生にとっては有利になる入試制度だ。